「1台の工作機械で多様なワークを効率良く削りたい」。顧客のこうした要求に応えるために、中村留精密工業(石川県白山市)が開発したのが、旋盤ベースの複合加工機、いわゆるターニングセンター(TC)「JX-200」だ。同社はこれを「第31回 日本国際工作機械見本市(JIMTOF2022)」(2022年11月8~13日)の出展の目玉に据え、多くの来場者を集めていた(図1、2)。
新しいTCは、旋削用にワークを把持する主軸を左右に配し、その中央にミリング加工を行う工具主軸を備えた構造(図3)。両主軸の下方にはタレット型刃物台が1つ付いている。
チャックサイズが8インチのTCでありながら、左右の主軸間の距離を最大で1250mmに広げた。より長い円柱状ワークを削りたいという顧客の要望に応えるためだ。これにより、最大加工長さを1058mmに伸ばした。最大加工径は325mmである。
2個のワークを同時加工できる
もう1つの顧客の要望である、効率良く削りたいという声に応えるべく、同社が開発したのが、コンパクトな工具主軸「NT Smart Cube」である(図4)。全長(高さ)を349.1mmと「世界最小クラス」(同社)に抑えた。通常の工具主軸の全長は400~480mmほどあるという。
工具主軸の全長の短さにこだわったのは、左右の主軸の間に工具主軸が入り込んで一方のワークのミリング加工を行う際に、もう1つのワークの旋削を止めないためである(図5)。例えば、左側の主軸でワークを把持して工具主軸でミリング加工を行っている間に、工具主軸の全長が短ければ、右側の主軸への干渉を避けられる。そのため、右側の主軸で別のワークを把持し、タレット型刃物台を使って旋削できる。つまり、常に2個のワークを切削し続けられる効率の高さを実現するというわけだ。