カーボンニュートラル対策が急がれる中、ヤマザキマザック(愛知県大口町)が着目したのは工作機械を使用する際の消費電力だった。特にカーボンフットプリント*1の6割超を占めるクーラントの冷却水の吐出量を細やかに制御するなどして消費電力の削減、ひいては二酸化炭素(CO2)排出力の抑制を図る。同社が「第31回 日本国際工作機械見本市(JIMTOF2022)」で展示した横形マシニングセンター(MC)「HCN-5000 NEO」では、クーラントと油圧・冷却などの消費電力を合わせて、従来製品に比べて最大46%削減したという(図1)*2。
ヤマザキマザックが従来機種を用いて自社工場で調査したところ、工作機械のカーボンフットプリントの8割程度は使用時の排出が占め、生産や調達時の排出は2割程度にすぎないという結果が出た。
消費電力量の中でも比率が高いのはクーラントのそれだ。「スラッジ処理/温度管理」で32.8%、「切屑(切りくず)処理」で32.2%と、合わせて65.0%を占めた。次いで「油圧・冷却・他」が29.2%。「主軸・駆動軸」は5.7%にすぎない。
こうした結果を受けて、「生産量を上げながら電力消費量を減らすために出した方策」(同社上席執行役員 商品開発部副本部長 先行開発センタセンタ長 FAソリューション事業部事業部長の堀部和也氏)が、HCN-5000 NEOのオプションの「スムースクーラントシステム」だ。NC装置を制御するソフトウエアの1つ「エナジーセーバー」で、切削量に応じてクーラントの吐出量などを細かく制御(図2)。シミュレーションによって切削体積を精緻に算出し、その算出量に基づいてクーラントの冷却水の最適な吐出量などを決める。
スラッジの回収率は99%まで高めた。そのために従来品より高性能の専用ポンプとフィルターを採用(図3)。切りくずをクーラントと一緒に回収・分離する仕組みとした。
加えて、液体の圧力を制御する「アキュムレータ式油圧ユニット」と、インバーターによって循環する冷水の温度を細かく調節する「インバーターチラーユニット」を搭載し、油圧・冷却における消費電力量を下げた。「46%」という消費電力量の削減は、こうした工夫の結果だ。