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 品質不正防止の第3条は「他部門に興味を持とう」です。

 大企業では仕事が部門ごとに細分化され、個々の業務は高度に専門化しています。専門性の強い仕事に携わっていると視野が狭くなりがちで、自分の仕事がどの部分を受け持っているのか、あるいは周りの部門が何を担当しているのかに興味を持てなくなります。

 しかし、他部門の業務内容を知ることは簡単ではありません。秘密保持の関係で部門ごとに情報が厳しく管理されているからです。おまけに、他部門には口出ししないほうが会社の居心地が良いこともあり、他部門への無関心が会社勤めのマナーになっている面もあります。

無関心とセクショナリズム

 周りの部門に無関心だと、自部署さえよければよしとする考え方、つまりセクショナリズムに陥りやすくなります。セクショナリズムには「排他型」と「無関心型」があります。どちらもその弊害は、競争力や生産性の長期的な低下をもたらすということです。この状態に陥ったときのワーストシナリオが品質不正です。(図1)。

 社風がセクショナリズムで病んでいるとき、前のめりの経営戦略だけで競争力や生産性を強化することは不可能です。「他部門に興味を持とう」というのは、不正防止だけでなく、企業活力を高めるためにも重要なポイントです。

図1 セクショナリズムと品質不正
図1 セクショナリズムと品質不正
(出所:安岡 孝司)
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品質不正の背景にあるセクショナリズム

 第2回で説明したように、品質不正は社内で立場の弱い部門で起きるケースが多いといえます。その意味で2022年に発覚した日野自動車のディーゼル不正には、通常の品質不正とはやや異なる構図がみられます。同社の不正はエンジン開発部門で行われていましたが、その部門は同社のエリート部隊だったからです

 立場の強い部門で起きた不正という点に関して、本件の調査報告書には次のように記されています1)

[1]今回問題を起こしたエンジン開発部隊は、日野の中ではエリート部隊(あるいは出世の登竜門)と言われ、口出ししにくい。

[2]何か言うと「俺たちエンジン部隊は大丈夫だから」と一蹴される

* ただし、日野自動車でも排ガス不正などの数値改ざんを直接行っていたのは、エンジン開発部門でも、エンジン設計部より立場の弱いパワートレーン実験部だった。排ガスや燃費の評価・測定を丸投げされていた同部は、立場の強いエンジン設計部に対して性能未達の事実を伝えることができなかった。

 他人の口出しを嫌がる人には二通りあります。1つは仕事に自信がない人で、あれこれダメ出しをされることを苦痛に感じる人です。筆者もダメ出しする人の気持ちも分からないでもないですが、丁寧に指導したほうが、感謝されるようになります。

 もう1つは自分のやり方が一番優れていると自負しているエリートタイプの人です。このような人は周りを見下し、「格下の人の意見は無用」と考えがちです。プライドの高い人は他人から意見されると、自分のやり方を否定されたように感じやすいので、適切な助言は難しい課題です。