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 アルプスアルパインは、スマートフォンなどの民生機器で普及している無線通信技術「Bluetooth Low Energy(BLE)」を利用した新しい測位システムを開発した。測位精度が±30cmほどと高いのが特徴だ。全地球測位システム(GPS)が届かない屋内でも利用できる。これまで無線技術を利用して数十cmという高精度な測位を実現するには、超広帯域無線(UWB:Ultra-Wide Band)通信を利用するのが一般的だった。アルプスアルパインのシステムはそんな常識を覆した。

 測定距離が長い点も特徴だ。UWB通信の測距範囲は一般に10mほどとされる。それに対し、アルプスアルパインのBLEベースの測位システムは、140m先まで測距できるという。こうした特徴を生かして、UWBと共存を図りながら、普及を図る。

「CEATEC 2022」の会場に掲げられたBLEベースの高精度測位システムの説明パネル
「CEATEC 2022」の会場に掲げられたBLEベースの高精度測位システムの説明パネル
(写真:日経クロステック)
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 ±30cmという精度にしたのは、人の歩幅である60cmを念頭に置いてのものだ。対象物と人の位置を高精度に計測できれば、さまざまな用途に利用しやすい。代表的なものが、キーフォブ(遠隔解錠装置)や、スマホを利用した自動車のスマートキーである。ドアから数十cmの距離にスマートキーが存在すれば、ポケットに入れたままでも解錠できる。自動車から離れれば、自動でドアをロックできる。自動車のドアだけではなく、トランクやガレージの扉を自動で開け閉めできる。

 アルプスアルパインは、こうした自動車向けスマートキーの用途を最初のターゲットにしている。BLEはスマホに広く採用されていることから、大衆車にも普及しやすいとみる。2022年10月に開催されたIT・エレクトロニクス分野の展示会「CEATEC 2022」では、自動車のキーフォブを想定した試作モジュールを披露した。

左がBLEの通信部品、右が同部品を搭載したキーフォブを想定したモジュール
左がBLEの通信部品、右が同部品を搭載したキーフォブを想定したモジュール
(写真:日経クロステック)
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 BLEベースの高精度測位システムは、産業用途でも有望だ。例えば、倉庫や工場内で物流ロボットと人が協働するエリアでの安全確保に利用できる。

高精度測位システムの応用例
高精度測位システムの応用例
(写真:日経クロステック)
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