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Pythonの開発環境にはいくつかの種類があり、代表的なのが「Anaconda」(アナコンダ)だ。Anacondaの概要やインストール方法、基本的な使い方を紹介する。

 Pythonはとても人気があるプログラミング言語です。人気の理由は、おぼえやすく使いやすいシンプルな文法であること、豊富なライブラリを備えていることなどが考えられます。特に、AI(人工知能)やデータ分析向けのライブラリが充実していることが、Pythonの人気を押し上げる一因になっています。

 Pythonの開発環境にはいくつかの種類があります。Pythonでプログラミングを行う際は、それらの中から目的に合った開発環境を選んで使ったり、複数の開発環境を使い分けたりします。とはいえ、Pythonを使い始めたばかりの方にとっては、どの開発環境から試せばよいのか、選択肢が多くて迷ってしまうかもしれません。そこで本稿では、Pythonの代表的な開発環境の一つである「Anaconda」(アナコンダ)について解説します。

 本稿では、Anacondaとは何かという説明から始めて、インストール方法や基本的な使い方を紹介します。そして、「Jupyter Notebook」(ジュピター・ノートブック)というツールを使ってプログラムを開発する方法や、「conda」(コンダ)というツールを使って複数のPythonの実行環境を使い分ける方法を解説します。1つの環境に様々なライブラリをインストールすると、開発するプログラムによっては、不要なライブラリやバージョンの異なるライブラリがエラーの要因になることがあります。condaを使うことで、不要なライブラリを整理し、必要なライブラリだけがインストールされた“きれいな環境”を用意できます。

 なお、本稿ではWindows 11/10パソコンを使うことを前提として解説を進めます。

Anacondaとは何か

 Pythonの開発環境の説明に入る前に、Pythonをパソコンに導入する方法を説明します。主に、以下の3つの方法があります。

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 1つ目と2つ目の方法では、Pythonそのものをインストールしています。

 一方、3つ目の方法であるAnacondaを使うと、Pythonがインストールされるだけでなく、プログラミングをサポートする定番のライブラリやツールが、最初から自動でインストールされます。

 Anacondaは、Pythonのプログラムを実行する「処理系」に加えて、AIやデータ分析に関連する多くの「ライブラリ」や、開発に役立つ各種の「ツール」を同梱しているソフトウエアです(図1)。Anacondaには無料版と有料版がありますが、学術や趣味が目的の場合には、無料版を使えます。

図1●AnacondaはCPythonに数々のライブラリやツールを同梱した製品だ
図1●AnacondaはCPythonに数々のライブラリやツールを同梱した製品だ
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Anacondaに含まれる処理系・ライブラリ・ツール

 図1に示したように、Anacondaには「処理系」「ライブラリ」「ツール」が含まれています。これらはAnacondaをインストールすれば、自動的にインストールされます。

 「処理系」とは、プログラミング言語で書かれたプログラムを実行するソフトウエアのことです。「言語処理系」と呼ぶこともあります。Anacondaに同梱されているPythonの処理系は、「CPython」(シー・パイソン)といいます。

 「CPython」は、Pythonの処理系の中で最もよく使われている標準の処理系です。CPythonのことを単に「Python」と呼ぶこともありますが、プログラミング言語としてのPythonと区別したい場合などには「CPython」と呼びます。

 CPythonは、その名前の通り、「C」というプログラミング言語で開発されています。C言語は古くから普及しているプログラミング言語です。

 Anacondaが同梱するライブラリについて見てみましょう。AIやデータ分析でよく使う、「NumPy」(ナムパイ)、「SciPy」(サイパイ)、「pandas」(パンダス)、「Matplotlib」(マットプロットリブ)、「scikit-learn」(サイキット・ラーン)などがあります。Pythonの公式Webサイトで配布されているPythonには、これらのライブラリは同梱されていません。AnacondaがAIやデータ分析のプログラムによく利用される理由は、これらのライブラリがあらかじめ使えるようになっているからです。

 開発に役立つツールも様々なものが同梱されていますが、中でも特徴的なのは、Pythonの実行環境を管理する「conda」というツールです。condaの詳しい使い方については後半で詳しく説明します。