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 DX(デジタル変革)の進展に伴い、ITエンジニアに求められるスキルや専門性が多様化する中、IT資格の有用性に関する意見が分かれている。「IT資格はキャリア形成の礎になる」と積極姿勢を見せるITエンジニアがいる一方で、「IT資格の勉強をする時間がもったいない。技術の習得に努めたほうがいい」との声も聞かれるようになった。

 IT人材は、自らのキャリア形成においてIT資格をどう位置付けたらよいのか。このテーマのヒントを探るべく、日経クロステックはIT大手10社を対象に、IT資格の活用について調査した。IT大手各社がIT資格をどう捉えているかは、ITエンジニアにとってIT資格の価値を測る参考材料になるだろう。

 調査の対象企業はBIPROGY、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、NEC、NTTデータ、SCSK、TIS、日本IBM、野村総合研究所、日立製作所、富士通である。これら10社へ2022年10月にメールでアンケートを送り、同月に全社から回答を得た。調査内容はIT資格をどのように活用しているかである。アンケートでは社内資格を除くIT資格について、次の6つの活用目的のうち該当するものを回答してもらった。該当する目的については、自由記入欄での補足説明を依頼した。

  1. 社員の対外的なスキル証明
  2. 社員のスキルレベルの現状把握
  3. 社員のスキルアップの目標設定
  4. 協力会社のエンジニアのスキルレベル把握
  5. 人材採用における就職希望者のスキルレベル把握
  6. その他

 回答を集計したところ、上記の活用目的のうち各社の特色がよく表れたのは(1)社員の対外的なスキル証明、(2)社員のスキルレベルの現状把握、(3)社員のスキルアップの目標設定、(5)人材採用における就職希望者のスキルレベル把握だった。そこでこの4つの目的について、IT資格の活用や施策を解説する。

各社の活用姿勢に差

 調査結果を基に、まず各社の資格活用の特徴を分かりやすく類型化する。各社が「昇格要件型」「取得ねぎらい型」「対外アピール型」の3つの類型にそれぞれ該当するかどうかを考える。1社が複数の類型に該当する場合もある。

 3つの類型の説明はこうだ。昇格要件型は「(2)社員のスキルレベルの現状把握」においてIT資格の保持を昇給や管理職への昇格の要件としているケースが当てはまる。

 取得ねぎらい型は「(3)社員のスキルアップの目標設定」において資格取得者に対して報奨金など金銭面でねぎらっているケースが該当する。ただし受験料など実費の補助にとどまるだけなら該当しないものとする。

 対外アピール型は「(1)社員の対外的なスキル証明」において、自社の人材の能力を対外的に訴求する際にIT資格を積極活用しているケースだ。単に「取引条件として必須である場合は書類に明記する」といった活用にとどまるのであれば、該当しないと考える。

 IT大手10社がそれぞれどの類型に該当するかは以下の図の通りだ。

IT大手10社が該当するIT資格活用の類型
IT大手10社が該当するIT資格活用の類型
(作成:日経クロステック)
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 以降で「社員のスキルレベルの現状把握」「社員のスキルアップの目標設定」「社員の対外的なスキル証明」「採用における応募者のスキル把握」に分け、調査結果を掘り下げていく。

「情報処理技術者試験」合格などが昇格要件に

 IT大手が社員のスキルレベルを把握する観点から、どのようにIT資格を活用しているか見ていこう。

社員のスキル把握を目的とした資格活用状況の一覧
社員のスキル把握を目的とした資格活用状況の一覧
(作成:日経クロステック)
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 調査したIT大手の大半がIT資格を社員のスキル把握に活用している。ここでは、IT資格を昇格や昇給の要件としている「昇格要件型」の該当企業に着目する。言い換えると、IT資格はキャリアに必須だと位置付けている企業だ。該当したのはNTTデータ、TIS、野村総合研究所、日立製作所の4社だった。

 NTTデータは「プロフェッショナルCDP」という社内認定制度に、資格の取得を組み込んでいる。プロフェッショナルCDPの認定は、管理職への昇格とも連動する。野村総合研究所は情報処理推進機構(IPA)が運営する情報処理技術者試験の高度試験(高度情報処理技術者試験)や上位区分のベンダー資格など取得難易度の高い資格を昇格時の必須、または加点要件とする。TISは若手社員を対象に基本情報技術者試験への合格を昇格の要件として定めている。日立製作所は応用情報技術者試験への合格を昇格要件の1つとする部門がある。

 昇格、昇給の要件ではないものの、活用方法に特徴があるのは富士通だ。近年メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用への移行を進めている。同社のジョブ型雇用では、社員がそれぞれ自分のキャリア形成を考えて、社内公募された様々なジョブへ応募する。応募の際の条件または推奨要件として特定資格の保持を定めることがあるという。