IoT(Internet of Things)をはじめとしたデジタル技術を組み込んだスマートハウス。住人の快適性や利便性を高めるだけでなく、健康の維持・向上を意識した「健康スマートハウス」が増えつつある。そこで重要となるのが、住人の健康データを収集し、活用する技術だ。これらの機能を組み込んだ鏡やトイレなどの開発が進んでいる。
健康スマートハウスでは住人の健康状態を解析し、異常を検知して疾患の早期発見につなげたり、住環境を制御して健康維持を実現したりする。住宅内だけでなく、遠隔地の家族への通知や、医療機関とのデータ共有といった機能も考えられる(図1)。こうした活用の基となるのが、住宅内で収集する健康データだ。
健康データの収集では、既存の体温計や血圧計などの機器で測定する方法がまずは考えられる。近年は機器のIoT化が進んで、データ収集の利便性は高まった。しかし、住人の健康状態を常に把握するためには、特別な動作が不要で日常生活において違和感を生まないデータの測定方法が求められる。
そこで健康スマートハウスでは、健康データを測定するセンサーなどを日常生活で使うさまざまな機器や場所に組み込む(図2)。例えば、顔を映すと心拍数や呼吸数などを検知できる鏡、座るだけで心臓病の発見につながる椅子、AI(人工知能)で排便状態を判定するトイレなどの開発が進んでいる。
特に鏡は、日常生活の中で健康データを測定する仕組みを組み込みやすいとされる。身だしなみを整えたり顔を洗ったりするときなど、ほぼ毎日使う。ある程度の時間は鏡の前にいることが想定できるため、解析に十分なデータを取得できる。表示機能を持たせることも可能だ。
例えばNTTデータとNTTデータSBC(大阪市)は、ミリ波レーダーで呼吸数や心拍数を取得する「スマートミラー」を開発した(図3)。利用者が鏡の前に立つとカメラが顔を認識し、自動でセンシングを始める。30秒ほどで、ミリ波レーダーを用いて呼吸数や心拍数を取得できるという。鏡にはサーモセンサーも組み込んであり、体温を取得できる。
NTTデータは、このスマートミラーを使って取得した健康データに基づいて機能性表示食品を提案する実証実験を味の素と共同で実施した。この実証実験は住宅内での活用を想定したものではないが、スマートミラーを住宅内に設置して高齢者の見守りなどにも活用することは十分に考えられる。