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 ネットワークスイッチにはレイヤー3(L3)の情報を扱えるL3スイッチもある。また、スイッチと似たネットワーク機器としてルーターがある。今回は、それらの違いを解説する。

 簡単に言うと、レイヤー2(L2)スイッチとL3スイッチ、ルーターは用途やデータの処理方法が異なる。

スイッチとルーターの違い
スイッチとルーターの違い
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 まずL2スイッチとルーターを比較しよう。ルーターは、L3でやりとりされるIPパケットの宛先IPアドレスを参照してIPパケットを転送する。つまりL2スイッチとルーターは対象とするレイヤーが異なる。

 もう1つの大きな違いは、ソフトウエアで処理するかハードウエアで処理するかだ。L2スイッチがハードウエアで処理するのに対して、ルーターは基本的にソフトウエアで処理する。

 ソフトウエアの処理は、メモリーに蓄積したプログラムをCPUが1個ずつ読み出して実行する。一方ハードウエアの処理では、特定の用途向けに設計および製造されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)と呼ばれる集積回路を用いる。ソフトウエアのような柔軟性はないが、メモリーから何度もプログラムを読み出す必要がない分、高速に処理できる。

LAN用ルーターはL3スイッチへ

 このようにL2スイッチとルーターは処理するレイヤーや速度が異なる。これらの違いから、かつての企業ネットワークではL2の通信はL2スイッチ、L3の通信はルーターと、役割が明確に分かれていた。この状況を変えたのがL3スイッチだ。

 1990年代後半、企業のLANは規模が拡大し、ルーターのソフトウエア処理ではIPパケットの転送が追いつかずに遅延が発生するケースが出始めた。さらに、LAN内のL2スイッチの数が増えたことで、ルーターのLANポートの数が足りなくなるケースも出てきた。処理性能が高くポート数が多いルーターは高額で、導入するハードルが高かった。

 そこにL3スイッチが登場した。L2スイッチにルーターの一部機能を追加したネットワークスイッチだ。具体的には、ルーターが備える(1)IPパケットの経路制御(ルーティング)、(2)IPパケットの転送(フォワーディング)、(3)IPパケットのフィルタリングという3つの機能を備える。

スイッチとルーターの基本機能の違い
スイッチとルーターの基本機能の違い
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 L3スイッチはこれらの機能をハードウエアで処理する。このため、同じ機能をソフトウエアで処理するルーターよりも高速だ。

 主にLAN内での使用を想定するため、NAT/NAPT(Network Address Translation/Network Address Port Translation)やVPN(Virtual Private Network)、PPPoE(Point-to-Point Protocol over Ethernet)接続といったWANやインターネット接続向けのルーター機能は備えていない機種が多い。その分、同水準の処理能力やポート数を備えるルーターより割安である。

 こうした特徴が受け入れられ、LAN内の通信はL2スイッチとL3スイッチが主役になった。ルーターはLAN内の通信での利用は減り、主にWANやインターネットとの接続に使われている。