データを共有する方法はたくさんあるが、それぞれにメリット・デメリットがある。利便性の高さと情報漏洩のしやすさはバーターになることもあるので、扱うデータの中身や共有相手によって使い分けなければならない。
昔ながらの物理メディアか、ネットワークを利用するか。LANを使うのか、クラウドを使うのか。数MB程度の文書なのか、数GBの動画なのか、数TBのバックアップデータなのかによっても共有方法の向き不向きがある。
今回は、情報漏洩のリスクに注意しつつ、さまざまなデータを共有する方法を紹介しよう。
手軽&確実で渡した感のある物理メディアは大容量データの共有が得意
まずは、オフラインで取引先や顧客など、外部の相手と情報を共有する方法を考えてみよう。昔は、物理メディアにデータをコピーし、手渡す方法が一般的だった。物理メディアを使うと、実際に渡した感じがするし、インターネットがよく分からないという人でも共有できる。
データを受け渡すメディアとしては、CD-R/DVD-RやUSBメモリーが安価で手に入る。昔はCD-Rが主流だったが、現在は光学ドライブを搭載していないPCも多い。そのため、ほとんどのPCに搭載しているUSBに接続するUSBメモリーが主流になっている。ちなみに、官公庁では今でも物理メディアとしてフロッピーディスクが使われているが、こちらは河野太郎デジタル担当相が2022年8月31日、廃止するとツイートしていた。
CD-Rは1枚当たり20~30円で購入でき、容量は約700MB。USBメモリーは32GBで500~600円前後という感じだ。大きなコストではないが、セキュリティー面で弱点があることは覚えておきたい。物理メディアを紛失したら、即情報漏洩のリスクが発生するのだ。ミスは必ず起き、そのときに組織が被る被害は想像以上に大きい。兵庫県尼崎市の業務委託を受けている企業の従業員が2022年6月、市民の個人情報を保存したUSBメモリーを無断で持ち出し、かばんごと紛失して事件になった。ニュースでも大きく報道されたので、知っている人も多いだろう。
8月には化粧品販売店を展開する企業が1万人以上の顧客情報を記録したUSBメモリーを紛失してしまった。10月には千葉市の医療機関から3000人以上の個人情報を記録したUSBメモリーがなくなった。実際のところ、紛失した人の約9割が報告しないという調査もある中、公表されているだけでも毎月のようにUSBメモリーの紛失が起きているのだ。
また、外部メディアはコンピューターウイルスの侵入経路となっており、利用を嫌がる企業も多い。以上の理由から、普段使いのデータ共有方法として、物理メディアを利用するのはお勧めできない。
ただし、大容量のデータを共有する際には、物理メディアを使うのが手っ取り早いこともある。写真をまとめて共有しようとすると、簡単に数GBになってしまう。このサイズになると気軽にオンラインで送ることができなくなるのだ。メールやビジネスチャットだと相手のストレージを消費して迷惑をかけることも。そんなとき、数百円で買えるUSBメモリーなら手軽にデータを共有できるのでオススメ。
少し高くなるが、セキュリティー機能付きのUSBメモリーを使えば、紛失してもパスワードで中身を守る製品も発売されている。情報漏洩を防ぐなら、このような製品を利用するのもありだ。
また、動画やシステムのバックアップデータなど、1TBを超えるようなデータはオンラインでも共有が難しいので、物理メディアを利用するほうがよいだろう。大容量のUSBメモリーを使ってもよいが割高になってしまうので、コストパフォーマンスのよい外付けHDDがオススメだ。1TBのUSBメモリーは2万円前後するが、外付けHDDなら2TBモデルでも7000円前後で手に入る。
とは言え、後述するオンラインのデータ共有でもTBクラスのデータに対応する方法があるので、物理メディアの利用を完全禁止にすることも可能だ。