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 車載HPC(High Performance Computer)で日本は中国に5年遅れている。大手Tier 1(自動車部品メーカー)であるドイツContinental(コンチネンタル)のKarsten Michels氏(Head of Product Line High-Performance Computer)が、「electronica Automotive Conference 2022」(2022年11月14日、ドイツ・ミュンヘン)の基調講演でこう語った(図1)。電動化や自動運転を背景にしてクルマには大きな変化が必要にもかかわらず、日本の自動車メーカーが保守的な姿勢から抜け出せないことが指摘された。

図1 地域別の車載HPC(High Performance Computer)の開発状況
図1 地域別の車載HPC(High Performance Computer)の開発状況
中国が早く、日本は遅い、という。スライドのSODはStart Of Development、SOPはStart Of Productionである。右端の人物がKarsten Michels氏(写真:日経クロステック、スライドの出所はContinental)
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 electronica Automotive Conference 2022は、エレクトロニクスの国際展示会「electronica 2022」(2022年11月15~18日、ドイツミュンヘン)の前日に行われたクルマのエレクトロニクスをテーマにした会議である。講演後にMichels氏に発言の真意を尋ねると、次のように説明した。「技術的に5年遅れているというわけではなく、日本の自動車メーカーが保守的すぎることを言いたかった。中国メーカーは約束した期限に実現できないと期限を延ばす。一方、日本メーカーは約束した期限に間に合いないことがないように、保守的な目標を発表しがちだ」(同氏)と語った。同氏の説明通りだと筆者は思うものの、「日本が遅い」という説明に違和感を持つ人が欧州に少ないことは残念である。 

 同氏の講演タイトルは「Software-defined Vehicle creates new Hardware Challenges」だった。以前のクルマの開発ではハードウエアが先行し、それで実現できる範囲でソフトウエア(機能)が決まった。最近はその順序が逆転しており、それをSoftware Defined Vehicle(SDV:ソフトウエア定義のクルマ)と呼んでいる。電動化を含めた環境規制対応や、自動運転を筆頭にした使い勝手の向上要求などにより、実現すべき機能が最初に決まる。実現すべき機能を先に決めると、その機能に対応したソフトウエアは大規模化しがちで、高性能なハードウエアをベースにした車載コンピューターシステムが必要になってくる。この高性能なコンピューターシステムが同氏の役職名や講演タイトルにあるHPCである。同氏は2026年のHPCに求められるハードウエア仕様(図2)や沿うべき業界標準(図3)などを示した。

図2 車載HPC(High Performance Computer)に必要なハードウエア仕様はうなぎ登り
図2 車載HPC(High Performance Computer)に必要なハードウエア仕様はうなぎ登り
2018年と2026年に必要な仕様を比較している。例えばCPU性能は15倍に上昇(写真:日経クロステック、スライドの出所はContinental)
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図3 車載HPCが沿うべき主な業界標準は3つ
図3 車載HPCが沿うべき主な業界標準は3つ
(1)自動車業界がソフトウエアの再利用性を高めるために発足させた組織「AUTOSAR」の規格、(2)英Arm(アーム)の車載ソフトウエアのオープンアーキテクチャー「SOAFEE:Scalable Open Architecture for Embedded Edge」、(3)オープンなIDE(統合開発環境)を運営するEclipse FoundationのSDV(ソフトウエア定義のクルマ)向けオープンプラットフォーム「Eclipse SDV」の3つが重要だとした(写真:日経クロステック、スライドの出所はContinental)
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