オランダNXP Semiconductors(NXPセミコンダクターズ)は、エレクトロニクス国際展示会「electronica 2022」(ドイツ・ミュンヘン 2022年11月15~18日)の初日(ドイツ時間)に、新たな車載マイコン「S32K39シリーズ」を発表した 日本語版ニュースリリース 。2つのモーター制御コプロセッサーを集積しており、EV(電気自動車)の心臓部といえるトラクションモーターを2個制御できる(図1)。会場で同社のBrian Carlson氏(Director, Global Product and Solutions Marketing、Automotive Microcontrollers and Processors)に、新製品の訴求ポイントを聞いた。
NXPは2017年に、車載マイコン/プロセッサーを英Arm(アーム)製のCPUコアをベースに一新すると宣言した*1。新しい車載マイコン/プロセッサーは「S32 Automotive Processing Platform」と呼ぶ共通基盤をベースに開発され、製品名やシリーズ名はS32から始まる。具体的には、車載ネットワークプロセッサー「S32G」*2、車載レーダープロセッサー「S32R」*3、車載リアルタイムプロセッサー「S32Z/S32E」*4、車載汎用マイコン「S32K」*5などである(図2)。
関連記事 *1 NXPが車載MCU/MPUを一新、全製品を単一環境で開発可能 *2 MaaS時代の車載ネットワークプロセッサー、22年モデルのクルマ向けにNXPから *3 車載77GHz帯レーダーシステム向けチップセット、NXPが発表 *4 車両制御系を1チップに統合、NXPが新型プロセッサー *5 世界の自動車メーカー10社が採用、NXPが車載ARMマイコン新製品のS32K39は、S32Kのハイエンド品に当たる(図3)。Carlson氏によれば新製品はEVに向けた汎用マイコンで、TSN(Time Sensitive Networking) Ethernet通信が可能、ASIL D準拠可能な機能安全性、安全なOTA(Over The Air)アップデートを可能にするセキュリティーハードウエアの集積といった特徴がある(図4)。ゾーンアーキテクチャー、SDV(Software Defined Vehicle)といった、クルマの最新トレンドに対応可能だという。
S32K39の最大の特徴は、モーター制御コプロセッサーを2つ備えており、1チップで2つのトラクションモーターを制御できることである(図5)。このコプロセッサーなどが外付けされたパワー半導体素子用ゲートドライバー(絶縁型ゲートドライバー「GD3162」など)を制御し、パワー半導体がトラクションモーターを駆動する。モーター制御は200kHzと高速に実行可能で、IGBTに加えてSiCやGaNパワー半導体が利用できるという。Carlson氏によれば、市場にある競合品は1つのチップで1つのモーターしか制御できず、制御周波数は50kHzどまりで、S32K39より見劣りするとのことだった。