全2248文字
PR

 黄色いロボットアームが1つひとつの商品を識別し、空いているラックを見つけて箱詰めしていく──。米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)は2022年11月10日、新型ロボットである「Sparrow(スパロー)」を発表し、報道陣に公開した。

 スパローはアマゾンで初となる、梱包前の個別商品を扱うことのできるロボットだ。アームだけでなく、認識などを担うシステム全体の名称である。アマゾンは2012年にロボットメーカーの米Kiva Systems(キバシステムズ)を買収し、物流ロボットに注力してきた。スパローは10年間の集大成の1つだ。その実力を見ていこう。

取材を基に日経クロステックが作成
取材を基に日経クロステックが作成
(背景写真:アマゾン・ドット・コム)
[画像のクリックで拡大表示]
アマゾン・ドット・コムの新ロボット「Sparrow」。2022年11月10日に開かれた実機によるデモの様子
アマゾン・ドット・コムの新ロボット「Sparrow」。2022年11月10日に開かれた実機によるデモの様子
(写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

 アマゾンが年間に扱う商品は延べ約50億個。1日当たり1300万個程度の商品を棚出しして保管、梱包する。2022年11月時点で、そのうち75%に何らかの形でロボットが関わっている。しかし、その多くは運搬や商品を段ボールなどに荷詰めした後の仕分け工程で、商品を個別に認識することは難しかった。

 2021年4月に発表し実用化済みの独自開発ロボット「Robin(ロビン)」や、2022年6月に発表した「Cardinal(カーディナル)」もその域を出ていなかった。これらは荷詰めした小包のラベルなどを読み取ってつかみ、アマゾンの荷車「GoCart(ゴーカート)」に載せることができる。

アマゾン・ドット・コムが2021年4月に発表したロボット「Robin」。ベルトコンベヤーの上を流れる小包を認識してつかむことができる
アマゾン・ドット・コムが2021年4月に発表したロボット「Robin」。ベルトコンベヤーの上を流れる小包を認識してつかむことができる
(写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

 スパローはそこから一歩進んでいる。数百万種類あるとされる商品群から個別の商品を認識して持ち上げ、それをラックに移動できる。商品を載せるラックの空き具合を認識し、びっしり箱詰めすることも可能だ。平面的な空き状況だけでなく、高さ方向の情報も認識できる。

 例えば下の写真では手前側に4つの黒いラックがある。4箱のうちどのラックの容積に余裕があり、商品を移動するのに適当であるかをロボット自身が判断するわけだ。デモの説明員によれば、認識と判断はクラウドとエッジ(ロボット本体)の両方を使って処理している。

  Amazonはスパローの時間当たりの仕分け個数を発表していない。報道公開のデモでは、1分間で8個の商品を持ち上げてラックに移すことができた。

スパローが商品をつかむ様子。アタッチメントは吸引式なので、正確には商品が吸い付いている
スパローが商品をつかむ様子。アタッチメントは吸引式なので、正確には商品が吸い付いている
(写真:アマゾン・ドット・コム)
[画像のクリックで拡大表示]

小麦粉からギフトカードまで全てをつかむ

 自宅にアマゾンから届く荷物を想像してみてほしい。荷詰めした後の小包は段ボールや紙袋、ビニール袋などに限られており、その種類は数十種にとどまるとみられる。ロビンやカーディナルはこれらを認識すればよく、AI(人工知能)に覚えさせるのは比較的容易だ。しかも、荷物の表面素材も限られているため、ピックアップの難易度も高くない。

 一方で、個別の商品をピックアップするとなると、その難易度は跳ね上がる。商品の形状や大きさ、重さ、向き、素材は千差万別で、それを即座に認識してアーム先のアタッチメントでつかまなければならないからだ。

 スパローの開発を担当したジェイソン・メッシンジャー・プリンシパルテクニカルプロダクトマネジャーは、その難しさを次のように表現する。

 「小麦粉が入った丸くて重いパッケージから、1枚のギフトカードまで、我々は多種多様な商品を扱わなければならず、技術革新が必要だった。どれくらいの重さで、表面はつるつるしているのかどうか。商品をどのように動かし、どのような力を加えれば持ち上げることができるか。AIとコンピュータービジョンを使って扱う商品を即座に認識し、アームでつかむ。ソフトウエアとハードウエアの融合が必要で、我々は繰り返し実験してきた」

 2022年11月時点で、スパローはAmazonの全商品のうち65%を扱うことができるという。メッシンジャー氏は「2023年末には100%になるよう改良を続けている」と説明した。アマゾンはスパローの実用化の時期を未定としているが、2023年ごろになるとみられる。