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 米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)が構想から9年をかけたドローン配送「Prime Air(プライム・エア)」がようやく2022年内に米国内で始まる。2022年11月10日に米ボストンで開いた発表会で詳細を明らかにした。10年後の2032年までに年間で5億個の荷物を空輸する計画も発表した。

 年内に始まるPrime Airの対象地域は、米カリフォルニア州ロックフォードと米テキサス州カレッジステーションの一部地域のみ。いずれも郊外で人口が密集しておらず、安全性の担保が比較的容易な地域とされる。同社は「数カ月から数年のうちにサービスエリアを拡大する」としている。

 対象地域に住む消費者が同社のサブスクリプションサービス「プライム」の会員であれば、追加料金なしで配送する。対象となる商品は5ポンド(約2.2kg)以内などの条件を満たすものに限られる。

 対象となる2地域には、付近にアマゾンの配送拠点であるフルフィルメントセンターがある。同社によれば、ドローンは同施設から半径3マイル(約4.83km)の範囲で飛行する。飛行高度は米国連邦航空局(FAA)の規制通り、高度400フィート以下としている。

 注文から1時間以内をめどに届ける。同社は最終的に30分以内の配送を目指すという。

取材を基に日経クロステックが作成
取材を基に日経クロステックが作成
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2022年11月10日の発表会で展示された「MK27-2」
2022年11月10日の発表会で展示された「MK27-2」
(写真:日経クロステック)
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 配送に使うのは独自開発した電動ドローン「MK27-2」。六角形の形状で6本のシャフトそれぞれにプロペラを搭載する。重量は約36kgだ。機体の下部に配送する荷物を収納するスペースを持ち、ドローンが配送先に到着すると低空飛行状態で自動で扉が開き荷物を落下させる仕組みだ。

 完全自律型のドローンで、飛行機の管制塔の役割を果たす「グラウンドシステム」がルートや配送先で安全を確保できる場所を決定する。ドローン自体にもセンサーなどで予期せぬ飛行物や配送先での障害物を認識して自動で回避するシステムを搭載。グラウンドシステムとドローンとの通信が途切れたとしても安全性を担保する設計だ。

 「何百万回の振動試験や疲労試験、風洞実験を繰り返してきた。最も重視しているのは安全性だ」。アマゾンでPrime Airを担当するデイビッド・カーボン・バイスプレジデントは発表会でこう述べた。

 同氏によれば、MK27-2には米航空宇宙局(NASA)が開発して世界中の航空宇宙産業メーカーが使用する標準的なシステムエンジニアリング手法を採用。他社と同様の安全要件を定義して設計し、部品やサブシステム、システムのそれぞれで必要な試験をクリアしているという。

 FAAはカレッジステーションでの環境影響評価を2022年9月に公開。「住宅地での最大騒音は50dBを超えないとみられる。これはFAAの基準値である65dBを大幅に下回っている」とし、「(アマゾンが)提案した行為は周囲に対して重大な影響を与えない」と結論付けた。