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 ここ数年で全国に広がっているAI(人工知能)オンデマンド交通。地域の交通事業者だけでなく異業種の参入が相次ぎ、実証運行から本格運行に移行する動きも活発になってきた。一方で、今なお検討段階や実証運行の段階にとどまっている地域も少なくない。何が成否を分けるのか。各地の成功事例からは大きく4種類のポイントが浮かび上がる。

 第1のポイントは、地域の公共交通インフラを支える自治体などが、AIオンデマンド交通導入の目的や要件を整理しておくことだ。交通空白地帯を解消したいのか、地域の児童が使っているスクールバスの代わりにするなど特定の用途を想定しているのか。あるいは観光地への送客なども狙うのか。導入目的の違いによって導入すべきシステムや車両、サービス提供体制、運用方針などが変わってくる。

 AIオンデマンド交通の運行管理システム「のるーと」を提供するネクスト・モビリティの藤岡健裕副社長は「AIオンデマンド交通でどんな地域課題を解決したいのか。その課題はどの程度深刻なのか。こうした点を自治体の担当者が特定しておくことが非常に重要だ」と指摘する。

 もっとも、自治体の意向に沿って導入を進めるだけではうまくいかない場合もある。よくあるのは「公平を期して、地域全体に乗降場所を設けてまんべんなくサービスエリアにしたい」といった自治体の要望だ。もともと乗降需要が少ないエリアまで広くカバーすれば、それだけAIオンデマンド交通の運営にムダが生じてしまう。車両運行を担う交通事業者や運行管理システムの提供会社などが自治体と対等の視点に立ち、実証データやノウハウを基に最適な導入形態を見いだす必要がある。

地元との調整には時間が必要

 第2のポイントは、路線バスやコミュニティーバス、タクシーなど地元の交通事業者と連携を深めておくことだ。既存の交通サービスとAIオンデマンド交通では運行の仕組みが異なるとはいえ、エリアが重複していれば多かれ少なかれ需要を取り合うことになる。交通事業者との連携が不十分では反発を招きかねない。

 AIオンデマンド交通を本格運行させる際には、自治体や交通事業者、業界団体などが集まる「地域公共交通会議」での合意形成を図る必要がある。そのため「(交通事業者との事前協議に)少なくとも半年、できれば1年かけるのが望ましい」(ネクスト・モビリティの藤岡副社長)という。

 「(AIオンデマンド交通の導入を円滑に進めるには)地元の交通事業者を含めた『座組み』を作れるかどうかが重要だ」。こう指摘するのは、ソフトバンクとトヨタ自動車の合弁会社で多様なモビリティーサービスを手掛けるMONET Technologiesの上村実事業本部事業推進部長だ。車両運行は地元の交通事業者が担い、そこに外部企業が運行管理システムを提供するなど、役割分担を図る方がAIオンデマンド交通の導入を成功させやすいという。