全2281文字
PR

 丸亀製麺など国内外約1700店舗を展開する外食大手のトリドールホールディングス。新型コロナ禍で一時的に業績は下振れしたものの、その後の回復はめざましい。 そんな同社が強みの源泉とするのが二律背反ならぬ「二律両立」。手間暇かけたこだわりと迅速で効率的なチェーン展開を両立する——。相反する取り組みを支えるのが、異色とも言えるシステム戦略だ。「持たない」を徹底し、全業務システムをSaaSに移行。「情シス」も持たない。内製化の逆張りとも言える手法で進める同社のDX(デジタル変革)に迫る。

トリドールホールディングス の主力事業である「丸亀製麺」の店舗外観
トリドールホールディングス の主力事業である「丸亀製麺」の店舗外観
(写真:北山 宏一)
[画像のクリックで拡大表示]

 「本当に何とかしなければならないという積年の思いがあった」――。トリドールホールディングス(HD)の粟田貴也社長は、改革前のシステムに対する危機感についてこう語る。

 トリドールHDは外食産業全体が打撃を受けた新型コロナウイルス禍でも素早く業績を回復させた。2021年3月期の売上収益は1347億円と前年度から落ち込んだものの、2022年3月期には1533億円とコロナ禍前の水準にまで戻した。直近の2023年3月期第1四半期、同第2四半期も増収の成長基調にある。

新型コロナ禍で 一時的に落ち込むも再成長
新型コロナ禍で 一時的に落ち込むも再成長
図 トリドールホールディングスの業績推移 出所:トリドールホールディングスの資料を基に日経コンピュータ作成
[画像のクリックで拡大表示]

 同社は「食の感動で、この星を満たせ。」をスローガンに、海外展開を加速させる考え。2028年3月期には売上収益を約2倍の3000億円に高め、「世界で5500店舗を超えるようなグローバルフードカンパニー」になることを目指す。だが、高い目標を実現するには「ITが足かせになっていた」(粟田社長)。

 これまで同社が築いてきたオンプレミスの業務システムでは国内・外の急速な店舗展開を支えられず、間接部門を含めた店舗を支える「裏」の仕組みを抜本的に改革する必要があった。そこで、2019年から異色とも言えるDX(デジタル変革)が始まった。このDXを託されたのが、同年9月に同社初のCIO(最高情報責任者)に就いた磯村康典執行役員CIO兼CTO(最高技術責任者) BT本部長だ(本特集第3回で関連記事)。

既存のITコストを全て洗い出す

 異色なのは同社がDXを進めるうえで採用した手法にある。自社に開発部隊を置く内製化にかじを切る事業会社が増えているなか、トリドールHDはその逆を行く徹底した「持たない」を選択。システム保守・運用などいわゆる「情シス」の業務もなくし、全業務システムをSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)に移行。バックオフィスの定型業務をBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)に移管する方針とした。