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 丸亀製麺など国内外約1700店舗を展開する外食大手のトリドールホールディングス。新型コロナ禍で一時的に業績は下振れしたものの、その後の回復はめざましい。 そんな同社が強みの源泉とするのが二律背反ならぬ「二律両立」。手間暇かけたこだわりと迅速で効率的なチェーン展開を両立する――。相反する取り組みを支えるのが、異色とも言えるシステム戦略だ。「持たない」を徹底し、全業務システムをSaaSに移行。「情シス」も持たない。内製化の逆張りとも言える手法で進める同社のDX(デジタル変革)に迫る。

トリドールホールディングス の主力事業である「丸亀製麺」の店舗内観
トリドールホールディングス の主力事業である「丸亀製麺」の店舗内観
(写真:北山 宏一)
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 「これこそが変化に強いシステムだ」。トリドールホールディングス(HD)の磯村康典執行役員CIO(最高情報責任者)兼CTO(最高技術責任者)BT本部長は複数のSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)を組み合わせて構成している業務システムについてこう強調する。

 同社のシステム構成について、磯村CIO兼CTOは「小舟を組み合わせている」と表現する。人事関連システムで言えば、労務管理や社員名簿など用途ごとに独立したSaaSで構成する。企業の成長に伴い、システムに変化が求められる場合は、用途ごとのSaaSを別のSaaSに入れ替えられる。組織や戦略の変革に柔軟に対応するためにはSaaSが適切なシステムと判断した。

 同社がSaaSを活用するにあたって重視するのがデータ連係だ。業務システムとして成立させるにはSaaS同士が連係し、データをやりとりする必要がある。

 同社が求める機能をSaaSが備えていない場合、磯村CIO兼CTOはSaaSベンダーに対して「他社も使える標準機能として新たに開発してもらえないか、直接交渉している」という。ただし、その際は「他社で使えないような独自の機能は要求しない」(同氏)。自社の業務体制をSaaSに合うように調整しながら、トリドールHD独自のカスタマイズ機能は作らない前提で、SaaSベンダーと緻密に交渉を続ける。これは同社が「持たない」を実現できる重要な要素だ。

SaaSに求める3つの要件

 トリドールHDは導入するSaaSに次の3つの要件を求めている。1つはシングルサインオンに対応していること。2つ目はユーザーや商品、店舗マスターの配布・共有機能があること。そして3つ目が取引データの出力機能に対応していること――である。

 SaaS群を1つのシステムであるかのように機能させるには、前述のデータ連係が不可欠で、そのためには3つの要件を満たす必要がある。

 同社がSaaSを連係させ1つの業務システムとして稼働させている例として、「人材開発プラットフォーム」がある。人事関連のそれぞれの用途に合わせたSaaSを組み合わせている。

複数のSaaSを組み合わせる
複数のSaaSを組み合わせる
図 人事に関連するSaaS群「人材開発プラットフォーム」の概要(2022年11月現在)(出所:トリドールホールディングスの資料を基に日経コンピュータ作成)
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 例えばアルバイトやパートスタッフの採用と正社員の採用にはそれぞれ別のSaaSを導入して、これらの採用情報は雇用契約や人事への諸届けなどを担うSaaSである「SmartHR」に送る。新たに雇用契約を結んだ社員の情報は社員名簿などを管理する「HRBrain」とSmartHRが連係することで自動的に名簿へ反映する。一部のSaaSはBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)業者のシステムとも連係する。パートやアルバイトスタッフの採用事務や人事、給与に関連する事務はBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)事業者に委託しており、関連するSaaSが必要なデータをやりとりする。