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 丸亀製麺など国内外約1700店舗を展開する外食大手のトリドールホールディングス。新型コロナ禍で一時的に業績は下振れしたものの、その後の回復はめざましい。そんな同社が強みの源泉とするのが二律背反ならぬ「二律両立」。手間暇かけたこだわりと迅速で効率的なチェーン展開を両立する——。相反する取り組みを支えるのが、異色とも言えるシステム戦略だ。「持たない」を徹底し、全業務システムをSaaSに移行。「情シス」も持たない。内製化の逆張りとも言える手法で進める同社のDX(デジタル変革)に迫る。

トリドールホールディングスの主力事業である「丸亀製麺」の店舗の様子。店舗数が増えても店内調理を貫く
トリドールホールディングスの主力事業である「丸亀製麺」の店舗の様子。店舗数が増えても店内調理を貫く
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 「企業のミッション、ビジョンを実現するためのDXでなければならない」――。トリドールホールディングス(HD)の磯村康典CIO(最高情報責任者)兼CTO(最高技術責任者)BT本部長は、DXの位置付けをこう強調する。

 トリドールHDは、同社が顧客に提供する価値を「感動体験」であるとしている。感動体験は顧客との接点を増やすことで生み出される。そのため、DXはマネジメント業務を最小限にして、顧客接点を増やす手段であると全社に示してきた。

 DXを同社のミッションとビジョンの実現を後押しする手段と位置付けることで、従業員にとって「DXの(経営上の)意義が成り立つ」(磯村CIO兼CTO)。こうした意義を共有することは、複数の部署が関わるDXの各プロジェクトを進めやすくする。

プロジェクトごとに柔軟に動く

 「変革は僕らにとっては日常茶飯事」――。トリドールHDの粟田貴也社長はこれまでの同社についてこう振り返る。1985年に創業した1軒の焼鳥店から、2022年の現在、約1700店舗を国内外で展開する大企業へと成長している。現在の主力は「丸亀製麺」だが、同社が丸亀製麺に注力したきっかけは、2004年に流行した鳥インフルエンザの影響だった。鶏肉の需要が一次的に減退し、もともと主力としていた焼鳥店からうどん店にシフトした。市場や企業の成長のステージに合わせて、適宜対応を続け変化してきた同社は、2019年から始まるDXによる新しい仕組みづくり、そしてその浸透についても柔軟に対応する体制を持つ。

 トリドールHDのDXのかじ取りを担うのが「BT(ビジネストランスフォーメーション)本部」だ。2020年10月に新設し、それまでIT関連施策を担当していた情報システム部門に該当するIT本部は解消した。BT本部はあくまでも「DXはビジネスを変革する手段」との考えの下で置かれた組織だ。IT本部で担っていた運用・保守業務はBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)事業者などへ切り出し、BT本部では、変革に向けた施策立案と実行のみを担う。

 BT本部には、「DX推進室」「BPO推進室」「データマネジメント推進室」の3つを設けた。プロジェクトにおいて「横」で連携する仕組みをつくり、実行する役割を担う。DX推進室の海老宏知室長は「社内で誰に相談したらよいか分かるように設けている」と話す。各名称は相談する側から見た分かりやすさを示しているという。