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最先端半導体研究の総本山というべき存在が、ベルギーの研究機関imecだ。先端半導体製造に欠かせない次世代のEUV(極端紫外線)露光装置の開発も、imecとオランダASMLホールディングとの共同プロジェクトとして進められている。ではimecは日本の半導体産業をどのように捉えているのか。都内で開催された年次イベント「Imec Technology Forum Japan 2022」で来日した、imec社長兼CEOのLuc Van den hove氏に聞いた。(聞き手は中道 理、小島郁太郎=日経クロステック/日経エレクトロニクス)

日経クロステックのインタビューに答えるimec社長兼CEOのLuc Van den hove氏
日経クロステックのインタビューに答えるimec社長兼CEOのLuc Van den hove氏
(写真:日経クロステック)
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日本が半導体分野において競争力を失って久しい。imecとしてどのようにみているか。

 私は日本の力を過小評価していない。日本は、半導体エコシステムにおいて、独自の強みを持ち、依然として非常に強力な地位を占めている。世界の半導体産業は、材料や製造装置の分野で日本に依存している。

 例えば、高度なフォトレジスト技術は、ほぼすべて日本発だ。特に材料面で強い。東京エレクトロンやSCREEN、日立ハイテクなど、製造装置の面でも強力な日本企業がいる。フラッシュメモリーではキオクシアがおり、イメージセンサーではソニーセミコンダクタソリューションズが強い。産業や自動車向けの半導体メーカーとしてルネサス エレクトロニクスがいる。さらに、先端半導体を使う、自動車やヘルスケア、バイオテクノロジー産業もある。

 確かに日本には欧州と同じく、高度な最先端のロジック技術が欠けているという問題がある。だからこそ、日本政府の半導体(復権)に向けた新しいイニシアチブは、日本の未来にとって重要だと思う。

 私は、この日本の計画に対して、強く支持していきたい。私たちは最先端メモリーや、最先端ロジックに取り組む世界のすべての主要企業と協力している。日本のイニシアチブをサポートするために、しっかりとしたパートナーシップを築きたいと考えている。

米国の中国に対する半導体輸出規制問題についてimecへの影響は?

 imecは最先端の技術を開発している。その主要パートナーは米国、台湾、韓国、そして日本の企業だ。そのため、2022年10月7日に米国が中国への半導体技術輸出規制を強化したが、我々はその前から世界が急速に変化していると理解し、中国向けの指針決め、準備を進めてきた。そのため、影響はあまり大きくなかった。

imecではこれからも半導体の微細化が進むと言っている。限界はまだ見えていないのか。

 技術的には、今後も微細化(スケーリング)が可能とみている。現在は最先端が5nm世代から3nm世代に移行している段階だが、すぐに2nmになる。さらに、我々が示した次の15年から20年にかけてのロードマップでは、ナノシートのGAA(Gate All Around)からフォークシートのGAA、そしてCFET(Complementary-Field Effect Transistor)、原子チャネルのCFETという具合に、10世代にもわたり、微細化が進んでいく。その先も、技術的な限界が見えているわけではない。処理すべきデータも指数関数的に増えており、こうした高度な技術が必要であることに疑いの余地はない。

一方で、先端半導体を製造するためのコストは増大し続ける。顧客はそのコストを払い続けられるのか。

 それについては、予測は難しい。これまでは、データ処理量の増大がそのまま利益の拡大につながり、コストを吸収できた。しかし、「今後もできるかどうか」という疑問はある。それに答えるのは困難だ。例えば、バリューチェーン全体で、利益がどのように分配されるかにも依存している。(エンドユーザーに直接サービスを提供する)上位レイヤーの人々が利益を得るだけなのか、その利益を半導体業界全体でもう少し得ることができるのか。コストに対して得られるトランジスタの能力の上昇率が鈍ってきたから、もう微細化は進められなくなるといった単純な議論ではない。言い方を変えると、新しい技術によって生み出された価値が、どれだけ半導体によってもたらされているのかということでもある。例えば、新しいスマートフォンやクルマ全体のシステムコストに対して、その比率を半導体側に大きく振るということも考えられる。