ドイツTRUMPF(トルンプ)は同社最大の金属3Dプリンター〔付加製造(AM)装置〕にグリーンレーザーを搭載した「TruPrint 5000 Green Edition」を開発した。従来の赤外波長のレーザーを使用する装置よりも銅材料を造形しやすい。同装置で造形した銅部品を世界最大級の3Dプリンティングの展示会「Formnext 2022」(2022年11月15~18日、ドイツ・フランクフルト)で披露した。
TruPrintシリーズは金属粉末を薄く敷き詰めたところに、レーザーを照射して焼結させる粉末床溶融結合(PBF)方式の金属3Dプリンター。銅は赤外波長の反射率が高い(吸収率が低い)ため、赤外波長のレーザーを使う従来のTruPrintでは造形しにくかった。
そこでTRUMPFは銅がよく吸収する波長である515 nmのグリーンレーザー発振器を独自に開発。生産性を重視した工業用3D プリンターである「TruPrint 5000」に搭載して、大型の銅部品を「高速かつ高品質に」(同社)製造できるようにした。
TruPrint 5000 Green Editionは既に活用が始まっている。例えば欧州の大学や企業が資金提供する粒子加速器*の研究開発プロジェクト「I.FAST」では、粒子を光速に近付けるために欠かせない部品である「高周波四重極(RFQ)」のプロトタイプの製作に使った。このRFQは純銅製で、大きさは直径148×長さ248mm。1回の積層造形で同サイズの部品を造れるという。
3Dプリンターを使うと設計の自由度が高まる。例えば、細い管状の冷却チャネルの配置を最適化して冷却性能を高められる。従来、RFQの冷却チャネルはドリルによる穴あけ加工で造れるような形状にしなければならなかった。
3Dプリンターには工程を簡素化できるというメリットもある。従来の製造法だと複数回の熱処理や、部品の組み立て、はんだ付けなどが必要だ。3Dプリンターで製造すれば、部品を一体化できるため、組み立てやはんだ付けの作業が不要になる。