英スタートアップのRivelin Roboticsは、金属3Dプリンターを使ったものづくりで造形物の土台や足場となる「サポート」の除去など後処理工程を自動化する装置を開発した。人工知能(AI)などを活用した制御ソフトウエアにより、さまざまな形状の造形品のサポートをロボットアームに装着したカッターなどの工具を使って自動的に切り離していく。自動化によって作業者による品質のばらつきを減らすとともに、部品単価の3割を占めるとされる後処理工程のコストを下げられる。
世界最大級の3Dプリンティングの展示会「Formnext 2022」(2022年11月15~18日、ドイツ・フランクフルト)で、サポートの除去と一部の表面仕上げを自動化する装置「NetShape Robots」を披露した。同社でCEO(最高経営責任者)を務めるRobert Bush氏は「現在、後処理工程は手作業が多い。金属3Dプリンターを本格導入する上では自動化が必須だ」と話す。同装置を使うと人が介在する作業が減るため、オペレーションコストと品質の低さに起因するコストをそれぞれ従来の1割にまで減らせるという。
自動化装置の肝は、同社が開発した制御ソフトウエア「NetShape」にある*。「機械学習と昔ながらの決定論的なモデルを併用することで、多様な形状に精度よく対応できる」(Bush氏)。装置のハードウエアは、カナダのLMI Technologiesの3次元スキャナー、安川電機の垂直多関節ロボット、仏Saint-Gobain(サンゴバン)の工具など汎用品を組み合わせたものだ。各メーカーと連携して用途にあった製品を活用しているという。
装置は次のような流れで機能する。まず後処理をしたい造形物をNetShape Robots内部に固定すると、3次元スキャナーが造形物をスキャンする。スキャンデータは、制御ソフトウエアのNetShape によって3D-CADデータと自動で照合される。ユーザーは3D-CADデータを見ながら、後処理したい面をディスプレー上のタッチ操作などで選ぶ。すると、NetShapeがサポート部を切断するのに必要なロボットアームの挙動を自動で算出する。ロボットをティーチングするのに、ユーザーがプログラミングコードを書く必要はないという。
次にアーム先端に工具を取り付けたロボットが、造形物のサポートなどを自動的に除去する。ロボットは力覚センサーを備えており、専用アルゴリズムによって力加減を制御しながら効率よく加工を進める。工具を付け替えて、研磨やショットブラストなどの加工を施すことも可能だ。Bush氏は「手でできる加工は基本的にNetShape Robotsでできる。しかも再現性が高い」と自信を見せる。