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IoT(Internet of Things)に適した小型で安価なコンピュータが増えてきた。こうしたコンピューターを使ってIoT機器の開発を実際に体験することで、IoTのハードウエアとソフトウエアに対する理解を深めていく。

 昨今、温度計による体温の測定は、新型コロナウイルスに対する感染予防の一環として、すっかり日常的な光景になりました。

 温度計には様々な種類がありますが、新型コロナウイルス対策で一気に普及したのが、「赤外線放射温度計」です。この温度計は、測定対象が放つ赤外線を検出することで、非接触で温度を測定できます。

 今回は、この赤外線放射温度計が内蔵している「非接触温度センサー」を利用してみます。非接触温度センサーを使って、スマートフォン(スマホ)で温度を確認できる測定装置を作ります。

 図1は作成する測定装置の全体構成です。非接触温度センサーの制御には、前回も使ったIoT向けの小型コンピューター「M5StickC Plus」を利用します。M5StickC Plusは液晶画面を内蔵しているので、温度の測定値を表示できます。さらに、無線LAN経由で測定値をスマホへ送信し、離れたところで温度を確認できるようにします。なお、M5StickC Plusとスマホ間の通信プロトコルにはUDP(User Datagram Protocol)を使います。

図1●作成する測定装置の全体構成
図1●作成する測定装置の全体構成
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必要な部品を用意する

 測定装置の作成に必要な部品を用意しましょう。次のものをそろえます。

  • IoT向けの小型コンピューター「M5StickC Plus」
  • 非接触温度センサー「MLX90614」のモジュール
  • USBケーブル(Type-C)
  • ジャンパーワイヤー(オス-オス型)×4本
  • ブレッドボード
  • iPhoneまたはiPad

 M5StickC Plusは中国M5Stack社の製品で、32ビットの高性能なSoC(System-on-a-Chip)を搭載しています。実売価格は3100円程度です。M5StickCPlusのプログラミングには、統合開発環境の「Arduino IDE」(https://www.arduino.cc/en/software)を使います。Arduino IDEのセットアップ方法については、前回の記事を参照してください。

 非接触温度センサーの「MLX90614」は、センサーに回路を追加した小型のモジュールとして販売されています(図2)。筆者の場合、Amazon.co.jpで、1480円で購入しました。ちなみに、Amazon.co.jpで「MLX90614」と検索すると、たくさんの製品が出てきます。それらのうち、基板の裏側に「GY-906」と印刷されているものを購入しましょう。

図2●非接触温度センサー「MLX90614」のモジュール
図2●非接触温度センサー「MLX90614」のモジュール
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 ジャンパーワイヤーとブレッドボードは配線のために使います(図3)。ジャンパーワイヤーはオス-オス型のものを4本利用します。

図3●ジャンパーワイヤー(左)とブレッドボード(右)
図3●ジャンパーワイヤー(左)とブレッドボード(右)
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 非接触温度センサーのモジュールは、付属のピンヘッダーをハンダ付けしましょう(図4)。これにより、モジュールをブレッドボードにそのまま挿し込めるようになります。ハンダ付けをするには、ハンダこてとハンダが必要です。

図4●非接触温度センサーのモジュールの構成。ピンヘッダーをハンダ付けする
図4●非接触温度センサーのモジュールの構成。ピンヘッダーをハンダ付けする
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