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 組織のあるべき姿から逆算した役割がジョブ(職務)であり、ジョブを更新するためには、リスキリング(学び直し)によって足りないスキルを取得する。ジョブ型人事制度とリスキリングは切っても切れない関係にある。DX(デジタルトランスフォーメーション)を果たすためには多様なスキルを持つ人材をアジャイルにアサインする必要があり、そのニーズに備える狙いだ。

 富士通、日立製作所、NTTデータのITベンダー大手3社は経営環境の変化に俊敏に対応するためジョブ型を導入した。いずれも社内人材のリスキリングに注力し、求められるスキルを身につけるべく、学習環境を整備している。

変わるベンダーの役割

 背景にはDXが叫ばれる状況下、顧客から求められるものが多様化し、かつスピードも求められるようになってきたことがある。ベンダーはユーザーにシステムを納品するだけではニーズに応えられなくなってきた。

 富士通の岡田順二Skill Ownership Office長は最近のシステム開発について「PM(プロジェクトマネジャー)がすべての責任を負う体制ではなくなっている」と指摘する。従来はPMを頂点とし、その下にSE(システムエンジニア)、PG(プログラマー)といった職種が控えるピラミッド型のシステム開発体制であった。

 しかし、顧客の業界や規模によってDXの「正解」は異なる。求められる課題解決案に短期間で応えるには、「フェーズによって登場人物が変わる『タイムライン形式』になりつつある」(岡田Office長)と話す。「SI」は従来「System Integration(システムインテグレーション)」を指したが、「Service Integration(サービスインテグレーション)」に変化しているという。

 例えば顧客の事業計画からシステム導入が必要となった場合、まずはビジネスコンサルタントが全体の構想を手掛ける。次にアカウントセールスやプリセールスが契約締結までをサポートする。受注後は、SEがプロトタイプを見せながら顧客とフィット&ギャップ分析を実施し、アジャイルに開発を進めていく。このように開発の段階に合わせてプレーヤーが入れ替わり、「役割に応じてサービスを提供する」(岡田Office長)ことでフラットかつアジャイルに開発を進めていくというのだ。

システム開発体制の変化。顧客の要求が多様化したことにより従来のピラミッド型からタイムライン形式に変わりつつある
システム開発体制の変化。顧客の要求が多様化したことにより従来のピラミッド型からタイムライン形式に変わりつつある
(出所:日経クロステック)
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 すなわちDXを推進するためには場面に応じた解決案を提示できる人材が不可欠になる。ITベンダーとしては、多様な人材をプールしておかなければならないわけだ。豊富な水源からこまめな水やりがなされれば、DXという土壌も豊かになる。

公募制度など社内システムと学びを連携

 富士通は2020年4月、学習のための社内ポータルサイト「Fujitsu Learning EXperience(FLX)」を大幅にリニューアルした。従来は事業部ごとに研修を設けるなど学びの機会が散乱していたが、これを1カ所に集約した。IT技術からビジネススキルまで受けられる研修の幅は広く、2022年2月時点で9600コースが受講可能だ。

 さらにはスーパーコンピューター「富岳」の開発者らによるコメントや組織ごとのアピール動画が閲覧できるなど、学習内容以外に興味を持てそうなコンテンツを充実させている。

富士通の学習ポータルサイト「Fujitsu Learning EXperience」の画面イメージ
富士通の学習ポータルサイト「Fujitsu Learning EXperience」の画面イメージ
(画像:富士通)
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 富士通の伊藤正幸キャリアオーナ支援部部長は「自分のキャリアに責任を持つことを大切にしている」と話し、キャリア自律の重要性を強調した。FLXはLMS(Learning Management System)を通じてほかの社内システムと連携しており、ジョブ型と相性の良いつくりになっている。

 例えば興味のあるジョブを登録しておくと、ジョブ単位での社内公募制度である「ポスティング」のシステムと連携し、募集がかかるとリコメンドしてくれる。社員のやる気を後押しし、社内労働市場を活性化させる狙いがある。

 学習状況はダッシュボードで可視化される。期初に学習目標を設定し、1カ月に一度上司と1on1の場で達成状況のフィードバックを受けられる。上司の伴走型サポートは、社員の学びの方向性を手助けするものだ。