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柔軟性や俊敏性の高い「アジャイル型組織」に企業をつくり替える――。これは組織の体制に加えて運営方法もアジャイル型に変える荒療治になる。では、アジャイル型組織の体制づくりや運営は実際にはどのようなものか。それを進めるうえでどんな課題に直面し、どう解決したらよいのか。先行企業の事例からアジャイル組織変革のヒントを探る。今回はマーケティングオートメーションソフト開発のSATORI(東京・渋谷)の事例を取り上げる。

 SATORIは大規模アジャイル開発フレームワーク「Scrum@Scale(スクラム・アット・スケール)」を採用し、全社をアジャイル型組織につくり替えた。ソフトウエア開発で活用していたアジャイル開発手法のスクラムを全社に適用した形だ。ソフトウエア開発部門だけでなく、企画・営業などの事業部門やバックオフィスもすべて5~7人のスクラムチーム群で構成した。

図 マーケティングオートメーションツールを開発するSATORIの組織図
図 マーケティングオートメーションツールを開発するSATORIの組織図
企業全体をスクラムチームで構成する(出所:SATORIへの取材を基に日経コンピュータ作成)
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 「(成長軌道に乗って)短期間で組織を3倍、4倍に大きくするには、共通言語のようなマネジメントの『型』が必要だった」――。SATORIの植山浩介社長はScrum@Scaleを採用した理由をこう説明する。SATORIは事業の成長に合わせて従業員数を拡大。2018年に約30人だった従業員数を、2022年11月には160人に増やしている。

 組織が大きくなると、マネジメントに再現性がなくなり、個人スキルに依存してしまう場面も増える。そこでSATORIはアジャイル手法で定められた「プラクティス」と呼ばれる各種の取り組みや成果物をマネジメントの型として導入した。

 例えば優先順位付きのタスクリストである「プロダクトバックログ」(以下バックログ)や、このバックログを基に次のスプリント(期間)で実施するタスクを決める「プランニング」、毎朝開く短時間のミーティングである「デイリースクラム」、スプリントを振り返る「レトロスペクティブ」などを各チームが実施し、マネジメント手法の統一を図っている。