全2483文字
PR

柔軟性や俊敏性の高い「アジャイル型組織」に企業をつくり替える――。これは組織の体制に加えて運営方法もアジャイル型に変える荒療治になる。では、アジャイル型組織の体制づくりや運営は実際にはどのようなものか。それを進めるうえでどんな課題に直面し、どう解決したらよいのか。先行企業の事例からアジャイル組織変革のヒントを探る。今回はKDDIとauカブコム証券の事例を取り上げる。

 KDDIはアジャイルのソフトウエア開発手法を取り入れたシステム部門を起点にして、アジャイルの組織運営方法を他部署へ段階的に広げている。2013年に一部の部署から始め、2016年には社内に「アジャイル開発センター」を設置。同組織を母体として、2022年7月に子会社のKDDIアジャイル開発センターを設立した。

 KDDI在籍時からアジャイル型組織への変革を主導する、KDDIアジャイル開発センターの木暮圭一社長は「(KDDIのような)大組織では一斉導入しても、狙った俊敏さを得られないと考えた」と時間をかけて適用部署を増やしている理由を話す。

段階的拡大に有効な2つのチーム

 アジャイル型組織を段階的に広げていくには、「パイロットチーム(リファレンスチーム)とリーダーシップチームをつくるのが有効だ」(木暮社長)という。

 パイロットチームは、全社に先行してアジャイル型組織の運営方法を導入するチームである。パイロットチームに求められるのは、自組織に適した仕事の進め方を「プレイブック」としてパターン化することである。

 アジャイル型組織の仕事の進め方は、従来組織のそれとは異なる。使うツールが異なり、試行錯誤しながらの業務になるため、予算確保のやり方が違う。バックログのつくり方も組織ごとにそれぞれ違う。こうしたアジャイル型組織の運用方法を、プレイブックとして定義するのだ。

 ただしパイロットチームをつくるだけでは、組織変革はうまくいかない。パイロットチームをサポートするリーダーシップチームも必要だという。

 リーダーシップチームは人や予算の権限を持つ本部長クラスによって編成する。パイロットチームをはじめとするアジャイル型組織で決めたルールなどが実態に合わなければすぐに変更しなければならない。こうしたルールの変更を承認したり、人や予算を確保したりしてアジャイル型組織のアジリティーを保つうえで、リーダーシップチームの存在は欠かせないという。

 リーダーシップチームのサポートの下、パイロットチームは小さくても構わないので早く結果を出すことに専念する。「他の部署にアジャイルを浸透させるには、パイロットチームの成果が説得力を持つ」(木暮社長)。

 KDDIはパイロットチームを成功させたことで、その人材の一部と、プレイブックとして蓄積したノウハウを横展開することにより、新たなスクラムチームを比較的スムーズに立ち上げられたという。

図 KDDIのアジャイル組織拡大策
図 KDDIのアジャイル組織拡大策
リーダーシップチームがスクラムチームを支援
[画像のクリックで拡大表示]