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 情報ネットワーク法学会は2022年12月3~4日に福岡市で第22回研究大会を開いた。2日目の分科会「実現が見えてきたインターネット投票」では、選挙管理委員会の意識調査からインターネットを介した投票への期待と懸念が示され、今後のインターネット投票の実現に向けた議論が交わされた。

高齢者が多い地域でインターネット投票への懸念が強い

 政治学が専門の東北大学の河村和徳准教授は、2022年3月から5月にかけて市区町村選挙管理委員会の事務局職員を対象に実施した選挙管理の実態調査の結果を紹介した。1741の市区町村選管事務局に送付し、回収率は75.5%だった。デジタル庁の発足が、選挙管理のDX(デジタルトランスフォーメーション)につながると期待する職員は回答者の約7割に上った。

 「インターネット投票は集計の手間が楽になるなどとして、選挙管理委員会の事務局職員には賛成する人が多い」と河村准教授は言う。現状は郵送の在外投票をインターネット投票に置き換えることについては7割以上が「賛成」「どちらかといえば賛成」と回答した。同じく、障害者や要介護者の郵便投票をインターネット投票に置き換えることについては過半数が「賛成」「どちらかといえば賛成」と回答した。

選挙管理委員会の事務局職員の多くはインターネット投票に前向き
選挙管理委員会の事務局職員の多くはインターネット投票に前向き
(出所:東北大学の河村和徳准教授による経済産業研究所ディスカッションペーパー「新型コロナ禍における日本の選挙ガバナンス:全国市区町村選挙管理委員会事務局調査の結果から」)
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 一方で、日本で情報システムを用いて投票する電子投票が広がりにくい理由として、河村准教授は「機器などのトラブルへの懸念、セキュリティー、コスト負担などに対する懸念が、特に高齢者が多い地域の選挙管理委員会で強い」と話した。調査では、選挙管理委員会の事務局職員の8割が「機器などのトラブルに対する懸念がある」、7割が「セキュリティー面での不安がある」と回答した(複数回答)。

 選挙管理の効率を高めるために、インターネット投票をはじめとした選挙DXが期待される一方で、システム障害や本人確認への懸念は根強い。2002年2月に施行された電磁記録投票法により、地方議員と首長の選挙では外部とネットワークで接続しない環境での「電子投票」が認められたが、システム障害の懸念などから施行後20年たってもほとんど実施されていない。