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 2024年春卒業予定の大学生の就職活動が早くも序盤戦に突入している。リクルート就職みらい研究所が2022年11月に発表した調査によると、2022年9月時点で学生の74%が既にインターンシップなどに参加済み。外資系の一部業種・職種など、選考を始めている企業もある。
 学生は国の指針である「2023年3月会社説明会、6月選考開始」を1つのスケジュールの目安としつつ、選考が本格化するまでに企業研究を進めることが求められる。
 本特集ではITベンダーやIT人材の採用に積極的な事業会社の新卒採用者を直撃。IT業界を志す学生が自身のキャリアプランを考える手掛かりとなるよう、各社担当者の生の声をお届けする。なお、政府の方針で2024年卒の広報解禁は2023年3月であるため、具体的な採用計画や選考フローなどは2023年卒向けの情報を基に記載している企業もある。

 豊富なIT人材を社内で抱え、「システム内製」に積極的なことで知られるニトリホールディングス(HD)。同社は新卒採用で総合職とは別に、IT人材の採用コースを設けるなどIT人材の採用に意欲的だ。同社はどのようなIT人材を求めているのか、またニトリグループでIT人材として働く魅力や、会社の強みや弱みについて、新卒採用を担当する新卒採用部東日本採用担当の武藤翼氏に聞いた。

ニトリHD新卒採用部東日本採用担当の武藤翼氏
ニトリHD新卒採用部東日本採用担当の武藤翼氏
(写真:北山 宏一)
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新卒採用でIT人材の採用コースを設けています。採用プロセスは。

 ニトリHDの新卒採用は、総合職とIT人材に分かれています。今回のインタビューはエンジニアを目指す学生向けだと思いますので、IT人材採用を中心に話ができればと思います。

 当社は2019年から、新卒でのIT人材採用を始めました。ニトリグループは2032年に店舗数を3000店、売上高を3兆円にする計画を掲げており、このタイミングでIT組織を1000人規模にする方針です。そのため近年は中途採用だけでなく、新卒でもIT人材の採用を積極化しています。

 IT人材採用で特徴的なのは、情報システム改革室(一般的な情報システム部門に相当)の社員も面接官を務める点です。総合職は人事が複数回の面接の全てを担当しますが、IT人材は現場でエンジニアとして働く社員にも、適性を見てもらうようにしています。

 現在進行中の2023年入社の新卒採用における具体的な採用人数の計画は非公表ですが、全体で500人以上を採る予定で、このうちIT人材は30人ほどを計画しています。2024年卒については現時点で公表していません。IT人材の採用数は、毎年増えています。

どのような学生を求めていますか。

 私たちは「高い志を持って日々挑戦し続ける人」と一緒に働きたいと考えています。そのため、求める人物像を、Change(変化)、Challenge(挑戦)、Competition(競争)、Communication(対話)の「4C」と定義しています。

ニトリHDが理想の人物像として掲げる「4C主義」
ニトリHDが理想の人物像として掲げる「4C主義」
(出所:ニトリHD)
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 IT人材はこの4Cに加えて、Curiosity(好奇心)もあることが望ましいです。テクノロジーに関心があり、ITを使って顧客の購買体験を良くしていくことに興味がある方に来てもらいたいです。採用面接では、学生時代の経験からこのあたりの話を伺いたいと考えています。

 新卒採用ではプログラミングなどのITスキルは求めておらず、そういった試験もありません。

入社後は、どのような育成・キャリアパスがあるのでしょうか。

 IT人材として入社した場合、最初の1年半は現場研修に出てもらいます。店舗を1年、物流部門を半年経験してもらって、ニトリグループの業務について学んでもらいます。そのためIT人材で入社した方も現場研修では顧客宅に車で訪問するケースも想定されますので、運転免許の取得をお願いしています。

 現場研修期間では週に1度、情報システム改革室のエンジニアとのミーティングを行うほか、年に複数回の集合研修も実施し、現場で使われているシステムの課題についてディスカッションします。実務と研修を通してシステムと業務のつながりを徹底的に理解してもらう狙いです。

 現場期研修を終えたあとは、情報システム改革室で約3カ月の研修を受けてもらいます。社内の研修だけでなく、外部のeラーニングサービスなどを通じてエンジニアに必要なビジネスフレームワークやITスキルを身に付けてもらいます。