ニトリグループに入社した新入社員は、「IT人材」枠でも1年半の現場研修を受ける――。日経クロステックが2023年1月24日に公開した就活生向けの記事が、SNS(交流サイト)をはじめとする読者の間で様々な議論を巻き起こした。
多くのITエンジニアの関心を集めたのが、ニトリグループの新卒者向け研修の内容に関する、採用担当者の下記の説明だ。
ニトリグループは、新入社員をすぐにIT部門には配属せず、現場を経験させる方針を採る。これについて読者の間では「自社の業務をしっかりと理解できるのはよい」と好意的な意見がある一方で、「1年半もの間、開発業務以外に時間を使うことを強いられるのはいかがなものか」といった懸念の声も多く見受けられた。
ニトリグループのIT人材育成について、ニトリホールディングスの白井俊之社長兼COO(最高執行責任者)と佐藤昌久上席執行役員CIO(最高情報責任者)に考えを聞いた。
「ビジネスモデルそのものを変えられる人材を増やしたい」
ニトリグループは約350人のIT部隊を社内で抱え、システム内製に積極的な企業として知られている。一般に日本の事業会社はシステム開発をITベンダーに依存するケースが多いとされるが、「ニトリグループは基幹システムを含め、8~9割のシステムは内製している」(佐藤CIO)。
新入社員に1年半、現場を経験してもらう理由について白井社長は「IT人材に業務理解を強く求めている」ためだと語る。具体的には、「現場でどのような課題があるのか、自分たちがつくったシステムがどのように運用されているのかをきちんと体感してもらうことが、良いシステムをつくり出す上で欠かせないと考えている」(白井社長)。
白井社長は、ニトリグループが求めるIT人材像についても言及する。「業務の仕組みとITは表裏一体であり、どちらか一方だけが分かっていてもだめだと思う。会社のビジネスプロセスやビジネスモデルを変えられる人材が、これからの事業会社のIT人材として求められていると思うし、我々も増やしたい。現在IT部門にいるメンバーはそれを感じてくれていると思う」(白井社長)。
事業会社のITエンジニアとして、現場を理解することは重要だ。気になるのは「1年半という期間が妥当なのか」という観点だ。