レールの交換や軌道の修正などを行う保線作業でも、自動化技術・デジタル技術の活用が進んでいる。熟練技能者の減少や人手不足、働き方改革などに伴って求められる省人化や省力化に、ロボットや無線監視システムなどが一役買っている。デジタルカメラの画像を利用した検出技術によって、人間の作業員では困難な高精度の測定を実現する動きもある。
人型ロボで高所作業の省力・安全化
鉄道保線ロボットの導入を計画しているのがJR西日本だ。人型重機開発のスタートアップ人機一体(滋賀県草津市)、信号機の製造を手掛ける日本信号と共同で、人型重機ロボットと鉄道工事用車両(軌陸クレーン車)を融合させた多機能鉄道重機の開発を進めている(図1)。2024年春の実用化を目指して、2022年4月から試作機による試験を始めた。
高所作業は従来、足場を設置するなどの準備が必要な上に、人手を要していた。手間がかかり危険が伴う高所作業を、多機能鉄道重機の力を借りて、少ない人数で地上から効率的に行えるようになれば、生産性や安全性を高められる。そのため多機能鉄道重機のロボットアームで、さまざまな形状の部材を把持できるようにし、架線部品の取り換えや架線支持物の塗装、樹木の伐採などの高所作業に対応させる(図2)。
操作に当たっては、ロボットアームにかかる荷重や反動を操縦者にフィードバックするハプティクス機能を持たせるなどして、直感的に操つれるようにするという。JR西日本は、約3割の省人化や感電・墜落などの労働災害ゼロという導入効果を期待している。