人口当たりの訴訟件数が日本の数倍、法務部門の規模は日本の10倍。世界最大の法務市場、米国に挑むスタートアップがLegalOn Technologies(リーガルオンテクノロジーズ)だ(2022年12月1日付でLegalForceから社名を変更)。
主力事業はAI(人工知能)を使った契約審査業務支援SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)の「LegalForce」だ。顧客企業が契約書データを同サービスに登録するとAIが内容を自動的に解析し、リスクとなる可能性の高い項目や必要な条項の抜け・漏れを洗い出す。修正の参考になる文例を提示したり、基準となる契約書との差分を比較したりすることも可能だ。
「下働き時代の文書作業が非常につらかった」。弁護士で創業者の角田望社長は、創業の背景をこう説明する。弁護士事務所で働き始めた当時、角田社長は顧問契約を結んだ顧客企業などがつくった契約書の内容を精査する業務に深夜まで忙殺されていた。顧客から受け取った時点の契約書には、重要な条項の見落としや誤字・脱字が含まれるのが日常茶飯事。誤りやリスクを見逃して自分の評価が下がるだけならいいが、顧客企業が訴訟沙汰になれば自分や所属弁護士事務所の責任問題になりかねない。
人手による契約書審査に限界を感じ「ITの力で審査業務を効率化する仕組みをつくるべきだ」と考えた角田社長は、同僚の弁護士と共に2017年4月に起業。2019年4月、LegalForceの提供を始めた。サービス開始3年半で導入企業数は2500社を突破。2022年6月には約137億円の資金調達実施を発表するなど、累計で約178億円を集めた。なお同サービスを巡っては法務省が2022年11月、弁護士法に違反しない可能性が高いとの見解を示している。