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 新型コロナウイルス禍からの需要回復に伴う需給逼迫、ウクライナ危機による原燃料の高騰、急激な円安の進行――。2022年は、建築界にとって未曽有の資材高騰に翻弄された激動の1年でした。公共事業では建築費膨張による入札不調や予算オーバーが続出。民間プロジェクトでも事業の延期や計画の見直しが相次ぐなど、建設市場には暗雲が漂い、先行きの不透明さに対する懸念が強まっています。

資材高騰はいつまで続くのか

 23年を占う上で、鍵となるのが資材高騰の行方です。木材価格は下落に転じ、鋼材価格は高止まりするも天井感が漂う中、注目は生コンクリートの価格動向です。建設物価調査会によると、東京17区現場持ち込み価格は22年10月に1m3当たり2800円値上がりし、1万7800円の高値で推移しています。生コンは建築工事で幅広く使用される材料だけに、建設会社は警戒感を示しています。

生コン価格の上昇に、建設会社は警戒感を抱いている。写真はイメージ(写真:日経クロステック)
生コン価格の上昇に、建設会社は警戒感を抱いている。写真はイメージ(写真:日経クロステック)
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東京17区の生コンクリート(強度18N/mm2、スランプ18cm、粗骨材の最大寸法25mm)の価格推移(資料:建設物価調査会の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
東京17区の生コンクリート(強度18N/mm2、スランプ18cm、粗骨材の最大寸法25mm)の価格推移(資料:建設物価調査会の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 原料高は生コンメーカーの経営を圧迫しています。22年6月に1m3当たり3000円の値上げに踏み切った東京地区生コンクリート協同組合は、23年4月から1m3当たり2000円の再値上げを実施すると表明しています。経済産業省と国土交通省は連名で22年12月、建設業関連の団体に対し、円滑な価格転嫁を進めるため、生コンメーカーとの売買契約を適正化するよう要請しました。こうした状況もあり、価格上昇のトレンドはしばらく続きそうです。

建設業の「2024年問題」、働き方改革が急務に

 こうした中、建築のビジネスや実務のルールを大きく変える法規制の施行が目前に迫っています。1つが、いわゆる建設業の「2024年問題」。24年4月1日から、働き方改革関連法に基づく時間外労働時間の上限規制が建設業に適用されます。もう1つが、住宅の「2025年問題」。25年4月に改正建築物省エネ法・改正建築基準法が全面施行され、住宅の省エネ基準適合義務化がスタートする予定です。建築界にとって23年は、変革への本気度が試される1年となりそうです。

 残業規制にどう対応していくのか、建設会社にとって働き方改革は喫緊の課題です。建設技術者や技能労働者の高齢化が進み、年々深刻化する人手不足の問題は実務の現場に影を落としています。人手不足の顕在化で労務費が高騰すれば、さらに建築費を押し上げることにもなりかねません。しかし、タイムリミットまで1年半を切ったにもかかわらず、建設会社の取り組みはあまり進んでいません。

 24年4月に始まる残業時間の上限規制とは、時間外労働を原則月45時間以内かつ年360時間以内に抑えるというものです。日本建設業連合会が22年9月に公表した調査報告書によると、会員企業に所属する労働者のうち非管理職の半数近くが21年度に年360時間を超える時間外労働をしていました。さらに約3割は、年720時間以内といった特例基準も超過していました。

 規制に対応するためには、建設現場の生産性を引き上げることが不可欠です。人員配置や現場作業の見直しを進めていくことは避けられないでしょう。省人化を図るため、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の活用やロボットの導入など、現場作業のDX(デジタルトランスフォーメーション)が活発になっていますが、一朝一夕にはいきません。23年以降は、発注者に対して工期面で配慮を求める動きが活発になりそうです。

現場作業の省力化を狙い、建設会社各社はロボット開発に注力している。写真は鹿島が開発したシステム天井施工ロボット。アームで天井ボードを保持して組み立てる(写真:日経アーキテクチュア)
現場作業の省力化を狙い、建設会社各社はロボット開発に注力している。写真は鹿島が開発したシステム天井施工ロボット。アームで天井ボードを保持して組み立てる(写真:日経アーキテクチュア)
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