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 2022年は日本市場に多くのEV(電気自動車)が登場し、「EV元年」などと呼ばれた。2023年はEVに触れるユーザーが増え、EVに対する理解が一段と進むだろう。おそらくEVの良さだけでなく、EVの課題にも多くの目が向けられるのではないか。その意味で2023年は「EVの実力が問われる年」になりそうだ。

 海外を見れば、すでにEVの成功は明らかではないかと言われそうだが、この勢いがどこまで続くのか、懐疑的な見方も多い。EVは電池コストの課題が大きいからだ。しかも、それを解決する画期的な技術の登場にはまだ時間がかかる。10年前に比べれば、電池コストは大幅に下がったものの、ここへ来て資源価格の高騰など逆風が吹き、先行きは不透明になってきた。日本では急速充電インフラの不足も大きな課題である。いざというときに電欠になる不安から、EVの購入を見送るユーザーは少なくない。

 こうした課題に対し、日本で生まれた軽自動車タイプのEVが現実解の1つとして注目されている。2022年5月に発表した日産自動車の軽EV「サクラ」とその兄弟車である三菱自動車の「eKクロスEV」は、電池容量を20kWhに抑えることで購入しやすい価格を実現した。国の補助金を利用した場合、実質180万円前後(消費税込み)で購入できる。EV特有の静粛性や高トルクを考えると、軽のガソリン車よりも魅力的と捉えるユーザーが出てくるのもうなずける。

 航続距離はWLTCモードで180kmと短いものの、1日の移動距離が数十km以内の日常使いを前提にすれば十分との指摘がある。また、ガソリンスタンドが減っている地方では、夜間に自宅で充電できる軽EVはむしろ便利との声も聞く。その一方で長距離の移動は苦手であり、利用シーンが限定されてしまう面は否めない。こうした軽EVの特徴が、日本でどこまで受け入れられるのか、結果次第では今後のクルマ開発に大きな影響を与えそうだ。

 日本のEV市場に参入した中国・比亜迪(BYD)の動きも目が離せない。2023年に日本市場に投入する第1弾のEV「ATTO 3」は、容量58.56kWhの電池を搭載しながら、価格を440万円(消費税込み)に抑えた。国の補助金を利用すれば、実質355万円で購入できる。今後、第2、第3弾のEVを通じて、さらなる価格競争を仕掛けてくる可能性もある。電池メーカーでもある同社が、電池コストというEV最大の課題にどう挑むのか、日本の自動車メーカーにとっても参考になりそうだ。

 EVの課題解決に加え、近年重要性が高まっているのが、カーボンニュートラル(炭素中立)燃料や水素エンジンといった内燃機関を活用した技術開発である。カーボンニュートラルを達成するための道はEVだけではない。むしろ、EVの先行きが不透明な今こそ、新たな選択肢となる技術を日本がリードすべきだろう。水素エンジンはトヨタ自動車が市販化を視野に開発を加速している。富士登山になぞらえると2022年は4合目に達したという。2023年はどこまで実用化に近づくのか、注目したい。