米Space Exploration Technologies(SpaceX)の衛星インターネット接続サービス「Starlink(スターリンク)」をサービス開始と同時に導入した。しかし解約した。なぜ解約したのか。横浜市在住の筆者の自宅は光ファイバーはもちろん、モバイルは4G圏内という環境下にある。そうなると、月額1万2300円(現在は値下がりして1万1000円)を支払ってまで、衛星インターネットを維持する必要はないと考えたからだ。
「自宅のネット環境が充実していることなど導入前から分かっていたことだろ」というツッコミは甘んじて受けよう。導入動機は至って単純で「ライターとして一度経験してみたかった」。それに尽きる。
これは導入後に知ったことだが、注文後30日以内にキャンセルすれば、アンテナなどのハードウエアを返品して、機器代の7万3000円も返金される仕組みとなっていた。「一応、衛星インターネットを経験できたし、それならば…」ということで解約したわけだ。
しかし話はこれで終わらなかった。無事、解約できたのはいいが、アンテナなどのハードウエア返品を受け付けてくれないという結末が待っていた。筆者の下には専用スタンド込みで直径約60cm、高さ約65cm、重量7kg以上の無用のアンテナが残されてしまったのだ。その顛末(てんまつ)は後述する。
北側の空が開けている場所に設置
とまあ、いきなり解約というネガティブな話題で始まったStarlink体験記だが、そのユーザー体験自体は、大いなる実用性を備えた素晴らしいサービスであることはしっかりとお伝えしたい。
電源さえ確保できれば、ネット環境が整っていない離島でも山奥でも、高速インターネットができるのだ。「宇宙との対話を通じて未来を先取りした感覚」といえば大げさだろうか。スループットの理論値は下り350Mbps、上り130Mbpsだが、筆者の場合下り70M〜80Mbps、上り10M〜15Mbps程度の速度しか体験できなかったのはちょっとばかり心残りだった。
サービス開始直後に導入した友人は、下り200Mbpsを普通に体験しているということなので、アンテナの設置条件に左右されるのだろう。友人は電気工事業者に依頼して、専用ポールを伸ばし屋根の上に設置している。
Starlinkの専用アプリを利用することでアンテナ設置場所からの衛星の「見え具合」を計測できるのだが、この判定が結構厳しい。自宅の庭で「これだけ空が見えていれば大丈夫だろう」と計測するものの、アプリからは「障害物が多くて不可」とにべもなく却下されてしまう。
北側の空が開けている場所に設置すると、良好な結果が得られるということなので、その条件に合う自宅駐車場に駐めたクルマの屋根の上にアンテナを置いて計測すると、無事通信可能となった(冒頭の写真)。
ただ、北向きに開けているとはいえ、自宅の土地は南向きに開けた窪地(くぼち)の底にあり、北側の丘の上には低層マンションや竹林などがあって、一定仰角以下で宇宙への視界を塞いでいる。
このような立地でやっと記録したのが、前述の下り70M〜80Mbpsという結果だった。仮に、友人のように専門業者に依頼して屋根より高い位置にアンテナを設置したとしても、低層マンションや竹林が一定の仰角以下を遮る以上、我が家の立地では限界があるということだ。