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やりがいを感じていないIT技術者は、全体の3割にも上る。彼ら彼女らを落胆させる大きな要因の1つは、経営層や上司の「好奇心」の欠如だ。任せておける有能なIT技術者ほど、他社から声がかかっているかもしれない。

 次に第2の仮説である、IT技術者の確保と活躍のための環境整備について見ていく。ここでは調査回答者のうち本調査で「ITに関わる職務ではない」と回答した人を除外し、IT技術者712人のみを分析対象とした。

 まずはIT技術者が自らの職場に対してやりがいを持って働いているのかどうかを分析した。やりがいについての設問への回答を集計すると、「回答したくない」を除く636人中190人、約3割ものIT技術者が「やりがいを感じていない」ことが分かった。

図 IT技術者のやりがいと相関の高い要因
図 IT技術者のやりがいと相関の高い要因
IT技術者のやりがいを左右するのはキャリア実現
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 IT技術者の仕事のやりがいの有無に対し、自社の経営層や上司はどのような影響を与えるのだろうか。本特集の執筆チームはこれを探るため、回帰分析による要因調査を実施した。

キャリアや成長がやりがいに関係

 調査対象とした要因は、DX経営の満足度、上司満足度、権限委譲、実践環境、悩み、および属性項目(年齢、年収、労働時間、企業規模)である。

 90%信頼水準で有意となった項目のみを抽出したところ、IT技術者のやりがいに最も大きく関わっているのは、自身が描くキャリアの実現と現在の業務との関連性であることが分かった。また、アイデアを提案するための十分な機会や、成長できる機会も大きな要因である。労働者としては現在の業務にも自身のキャリア形成にも高い意識を持っていることがIT技術者の大きな特徴であると言える。

 その上で、「DX経営満足度」と「上司満足度」もIT技術者のやりがいを左右する重要な要素であるとの結果も出た。両者を比較すると、やりがいとの相関はDX経営満足度の方が大きい。

 DX経営満足度が1段階上昇すると、やりがいを感じる人のオッズ比は2.5倍程度増える。IT技術者のやりがいの問題は、上司の問題以上にDXに取り組む経営者の問題と言える。

 なお、この回帰分析では「企業規模が300人以上1000人未満」であることもIT技術者のやりがいに関わっているとの結果も出た。IT技術者にとっては、このくらいの規模の企業が最も居心地が良いのかもしれない。