DXの先進企業、中位企業、遅れている企業の間で取り組み状況の差が大きいのは、ITへの向学心醸成や全社的なIT教育である。論理思考はもはや当たり前。必要なのはVUCAの時代を生き抜く人材育成だ。
次に第3の仮説である、IT技術者だけでなく全社員のIT技術やDXの学びについて見ていく。ここではDX推進企業の特徴を捉えるため、直接対応している顧客・業務提供先が「自社事業部門」「社内エンドユーザー」「社外エンドユーザー(一般消費者)」のいずれかとした回答者を対象とした。
まずは、自社のDXの取り組み状況を同業他社との比較で尋ね、DX推進度を分類して集計した。業界をけん引する企業になるには何が必要か、経営層や上司の観点から分析した。
具体的には回答者の評価を基に、自社が業界内で「先頭グループ」に位置する企業を「DXリーダー」、「平均的なグループ」を「DXチャレンジャー」、「遅れているグループ」を「DXフォロワー」と定義した。DXリーダーは247人中13人、全体のわずか5%だ。
次に、経営層や上司に対するDX推進の満足度についての設問で、「分からない/答えたくない」を除く168人の回答を分析した。その結果、DXリーダーの企業は経営層や上司への満足度がともに高く、以下DXチャレンジャー、DXフォロワーの順で徐々に満足度が低下していた。
経営層や上司への満足度が高いDXリーダー企業では、DXの推進方針が経営層から上司、社員へ伝わり、理解されているとみられる。一方でDXチャレンジャーやDXフォロワーの企業では社員の経営層に対する不満から、経営層の立てたDX推進方針の伝達度やDX推進度が低いと考えられる。
つまり、企業がDXを推進する上で特に経営層の旗振りは重要であり、経営層が社員から信頼されDXの推進力を持つ企業ほど、全社一丸となりDXを推進できるようになる。一般社員だけ、管理職だけがDXへの理解を深めても、それだけでは推進が難しい。