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 日本IBMの山口明夫社長は国内企業のDX(デジタル変革)は着実に進み、「良い意味で落ち着いた」とみる。2023年は半導体や量子コンピューターといった先端技術への投資を含む5領域に注力する。地銀勘定系システム共同化へ新たなインフラ像を提示し、コスト削減を超えた価値を訴求する。

(聞き手は浅川 直輝=日経コンピュータ編集長、貴島 逸斗=日経クロステック/日経コンピュータ、山端 宏実=日経クロステック/日経コンピュータ)

山口 明夫(やまぐち・あきお)氏
山口 明夫(やまぐち・あきお)氏
1987年大阪工業大学工学部卒、同年日本IBM入社。取締役専務執行役員グローバル・ビジネス・サービス事業本部本部長などを経て、2019年5月から現職。2017年7月から、米国本社の経営執行メンバー(Performance Team)にも名を連ねている。1964年生まれの58歳。和歌山県出身。(写真:村田 和聡)
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1年前のインタビューでは「日本の経営者のDXへの理解が深まり、いかに実践するかに焦点が移りつつある」と語っていました。この1年、日本企業のDXの進み具合をどう見ますか。

 私の中では(ブームが)ちょっと落ち着いたかな、と。良い意味でね。クラウドの利用イコールDXといった考え方から一歩進んで、ITの活用方法を冷静に検討するフェーズに入りました。ビジネスモデルを大きく変えたり新しい市場を開拓したりするために、どんなテクノロジーやデータをどう活用するか、落ち着いて前向きに考えられる環境になったと感じています。

スイスIMDの「世界デジタル競争力ランキング」で日本が過去最低順位になるなど、国内企業はDXで依然として世界に後れを取っているようにみえます。

 現状を踏襲する傾向が強いためではないでしょうか。DXとは非連続な変革であって、失敗も辞さない方針で取り組まなければなりません。現状に目を奪われすぎては前に進めません。DXで成果を上げている企業の経営者は、皆リスクを踏まえて決断しています。