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 ソニーはテクノロジー見本市「CES 2023」(2023年1月5~8日、米国ラスベガス)で、可搬式の簡易型ボリュメトリックシステムのプロトタイプを初公開した。7台のセンサー装置で周囲を取り囲んだ直径約5mの空間に被写体(人物・物体・空間)が入ると、およそ10~15秒でその3D(3次元)CG(コンピューターグラフィックス)動画を制作し、メタバース(仮想)空間内に表示する(図1)。

図1 開発した可搬式のボリュメトリックシステム
図1 開発した可搬式のボリュメトリックシステム
7台のセンサー装置で周囲を取り囲んだ空間で撮影する。撮影範囲は直径約5m(写真:日経クロステック)
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 同社は既に映像クリエーターなどに向けてハイエンドのボリュメトリックシステムを開発し、専用スタジオを保有している。こちらは4Kカメラを100台以上使用し、得意とする画像処理技術を組み合わせてフォトリアルなレンダリングができる点を売りにしている。

 今回開発したのは、それとは対極に位置するシステムである。専用スタジオは不要で、イベントなどに持ち込んでその場で手軽にメタバース空間に入り込む体験を可能にする。3D映像配信用途などに向ける。「ハイエンドのシステムとは相補関係にある」と、開発を担当したソニー新規ビジネス・技術開発本部先端テクノロジー開発部門技術開発部担当部長の田中健司氏は言う。

 実際、ソニーは2022年10月、次世代のオンラインファンコミュニティーの実現などを目指すために提携している、英プロサッカーの強豪、Manchester City Football Club(マンチェスター・シティFC)にこのシステムを持ち込み、3人の選手に体験をしてもらった(図2)。機材のセッティングは半日で終了したという。

図2 マンチェスター・シティFCの選手の撮影風景と3DCG
図2 マンチェスター・シティFCの選手の撮影風景と3DCG
左が撮影の様子、右が制作した3DCG。10~15秒で3DCGが出来上がる。CESの会場では、来場者が体験できるほか、マンチェスター・シティFCに所属する選手が撮影されている様子を動画で流していた(写真:日経クロステック)
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