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 巨大な風力発電のブレードにロボットアーム、そして上空にはドローンやサメ、飛行機の模型。こんな演出で「CES 2023」(2023年1月5~8日、米国ラスベガス)への来場者の関心を引いているのがニコンだ(図1)。同社の展示は例年、カメラなどの新製品の紹介を中心に据えていた。ところが、今回は趣向を変えて中期経営計画(2022~2025年度)を基に思い描いている未来を紹介している。ちなみに、同社の中期経営計画で示す2030年のありたい姿は「人と機械が共創する社会の中心企業」だ。

図1 ニコンのブースの様子
図1 ニコンのブースの様子
写真左に風力発電のブレードのモック、上空にはサメや飛行機の模型が展示されている(写真:日経クロステック)
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 その未来とは何か。例えば、同社が得意とする「リブレット加工」の適用範囲を、ロボットを活用して広げるという構想だ。リブレット加工はサメの肌にヒントを得たもので、レーザーで素材の表面に微細な溝を形成する。同社は半導体露光装置の開発で培った技術を転用することで、リブレット加工に強みを持つ。

 これを風力発電のブレードや飛行機に施すと、素材の摩擦抵抗が減るため、発電効率や燃費が改善し、二酸化炭素(CO2)排出量の削減に貢献するとしている。

 全日本空輸(ANA)は2022年10月3日、機体の表面の一部にサメ肌状のフィルムを貼って空気抵抗を減らし、燃費の改善を目指す取り組みを始めると発表した。このフィルムはニコンが提供している。ANAによると、機材表面の80%にこのフィルムを装着した場合に燃費が2%改善し、年間で燃油費を80億円、CO2排出を30万トン削減できるとしている。