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 センサー系スターアップのボールウェーブ(Ball Wave、仙台市)は、「CES 2023」に世界最小をうたうガス分析器(ガスクロマトグラフ)「Sylph(シルフ)」を出展した(図1)。同社によれば、通常、ガス分析に使われている装置は小型冷蔵庫ほどのサイズだが、それと比較しておよそ1/20のサイズを実現した。消費電力もおよそ1/20としている。一方で、検出感度は従来装置と同等レベルを確保しているという。

 Sylphの寸法は幅133mm×高さ88mm×奥行174mm、重さは1.9kgである。

図1 世界最小のガス分析器「Sylph」
図1 世界最小のガス分析器「Sylph」
通常、ガス分析に使われているガスクロマトグラフと比較して、体積や消費電力が1/20だという。価格は、PCやキャリアガスも含めてボタンを押せばすぐに測定できる状態で400万円程度としている(写真:日経クロステック)
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 通常のガスクロマトグラフィーは「事後分析」だが、Sylphは計測したい場所に装置を持ち運んで分析する「その場観察」に変えるインパクトを持つ。CES 2023では、宅内などに持ち込んで揮発性有機化合物(VOC)を検出したり、ドローンなどのロボットの「鼻」として高所のガス分析をしたりする用途を提案していた。

 同社のコア技術は、球状のボールSAW(表面弾性波)センサーを軸としたセンサープラットフォームにある。通常、SAWセンサーでは感応膜に分子が吸着した際の表面弾性波の音速と減衰の変化を検出する。ただし、通常の平面型SAWセンサーでは感度もしくは応答速度が不十分で実用化が難しかったという。そこでボールウェーブは、センサーを球体にすることでこの課題を解決した(図2)。

図2 球状のボールSAWセンサー
図2 球状のボールSAWセンサー
直径は3.3mm。素材は水晶単結晶である。平面型SAWセンサーでは難しい高感度を実現した点が特徴(写真:ボールウェーブ)

 球体の表面に特定の幅で表面弾性波が発生すると、その波は回折しないで直進し、球体の赤道周辺を多重周回する。この現象は東北大学大学院工学研究科材料システム工学専攻教授の山中一司氏が1999年に発見した。

 例えば表面弾性波が球体を100周回ると、ガス分子を吸着した感応膜による微量な変化が周回ごとに積算されて100倍となる。そのため、ボール型は平面型に比べてはるかに高感度になるという。

 Sylphに搭載しているボールSAWセンサーの直径は3.3mm。素材は水晶単結晶である。感応膜をガスクロマトグラフィー用の有機薄膜にするとともに、同社独自の技術によって「濃縮器」と「カラム」という基本部品も小型にすることで、片手で持てるサイズにまで小型化した。消費電力は約20Wで、バッテリー駆動も可能。また、センサーに塗布する感応膜を変えることで種々の分析器に応用できるとしている。