ソニー・ホンダモビリティは「CES 2023」(2023年1月5~8日、米国ラスベガス)で、EV(電気自動車)の新ブランド「AFEELA(アフィーラ)」を発表し、そのプロトタイプを初披露した。2025年内に発売し、2026年春に北米で納車開始を目指す。プロトタイプは4ドアクーペの車両で、車内外に計45個のカメラおよびセンサーを搭載。最大800TOPS(800兆オペレーション/秒)の処理能力を持つECU(電子制御ユニット)を載せることで、特定条件下でレベル3、より広い運転条件下でレベル2+の自動運転機能を実現する。さらに特徴的なのが、車両の前部と後部に「Media Bar(メディアバー)」と呼ぶディスプレーを搭載し、モビリティーと人のインタラクティブなコミュニケーションの実現を目指すとしている点だ。同社代表取締役社長兼COO(最高執行責任者)の川西泉氏に話を聞いた(図1)。(聞き手:内田 泰、土屋丈太=日経クロステック/日経エレクトロニクス)
今回のプロトタイプを開発するに当たって最も重要視した部分はどこでしょうか。
基本的な考えとして、人とモビリティーの関係はどうあるべきか、これまでの移動のためのツールからもう少し違う世界をモビリティーで実現できないかということが起点にあります。
具体的には、将来やってくる自動運転時代を見据え、人が運転という行為から解放されたときに、移動はしているけど運転はしていないという時間をどのように費やしていくかという部分に注力しました。
完全な自動運転の実現にはまだ時間がかかると思いますが、そこに至るまでの過程で、上記のような要素が今後増えていくと思います。モビリティーがよりインテリジェント(知力)化していくなかで、その可能性をどれだけ提案していけるかが勝負になっていきます。
これまでのクルマは馬力やスピードといった運動性能を中心に競争をしてきた世界でしたが、私はこれからはインテリジェンスを強化していくべきだとずっと考えてきました。知力の発達によって、より人に寄り添えるモビリティーになるからです。
この部分が、モビリティーの世界で当社がユニークさを発揮できる点だと考えています。もちろん、安全性の面で運動性能も重要で、そこが今回ホンダさんと協業している最大の理由です。それを踏まえたうえで、高度な知力をモビリティーに搭載したいと考えています(図2)。
この方向性に関してホンダと議論を重ねてきたのでしょうか。
もちろん、これまでにさまざまな議論を重ねてきましたが、もともと「普通のクルマを造ってもしょうがない」という考えは両社で一致していました。そのなかで、具体的に「それは何だ」という部分を話し合っていく過程で、方向性を共有できてきたと考えています。
それを実際にどう表現していくかについて、クルマとしてどうまとめていくかの部分では、ホンダさんの知見が生きていきますし、逆にどういう色をつけていくかに関してはソニーが持っているエンターテインメント関連の技術であったり、コンテンツが生きてくると思います。
これまで犬型ロボット「aibo」などの開発を手掛けてきた川西さんは、AFEELAをクルマというよりはロボットとみなして開発を進めているのでしょうか。
そうです。突き詰めると、AI(人工知能)とロボティクスです。もともとソニーグループでEVコンセプトカーの「Vision-S」を開発しているときも、aiboもドローンも基本的な概念は同じという説明をしていて、今回もその延長にあります。この点については、ホンダさんも共感していると思います。