「CES 2023」(2023年1月5~8日、米国ラスベガス)のベネチアン・コンベンション&エキスポセンター(旧サンズ・エクスポ&コンベンション・センター)にブースを構えた日本の光触媒ベンチャー「カルテック」(大阪市)の展示が人気を博していた。筆者が取材していた間も、ひっきりなしに来場者が訪れていた。
カルテックは世界的にも例のない独自の光触媒技術で空気浄化、水浄化、食品ロス改善のための製品を壁掛け型、首掛け型の除菌・脱臭器などの多彩な商品を展開している。2022年12月には世界初の光触媒水浄化による美容加湿器を発表した。水道水に含まれる残留塩素などを除去した高純度の水を、光触媒作用で長時間保てる機能がセールスポイントだ。ブースでは多くの来訪者が顔にミストを当てていた。
人気の秘密はシャープで培ったものづくりの手法
光触媒は1972年、東京大学大学院生だった本多健一氏と藤嶋昭氏が発見・開発した日本発の技術だ。二酸化チタン(TiO2)に光を照射して生まれる酸化力が、有害物除去、消臭、抗菌、防藻、防カビ、防汚といったさまざまな効果を発揮する。昨今の社会的な状況を反映して、多くの応用製品が世に広がっている。
カルテックは創業者で社長の染井潤一氏をはじめ、シャープからのスピンアウト組が多い。染井氏は創業時の思いをこう振り返る。「シャープ時代から殺菌・脱臭技術として光触媒に取り組んでいた。既に『プラズマクラスター』が強いブランドとして定着していたことから、光触媒はシャープの外で事業化するのがよいと判断した。発展途上国で生活飲料水の健康被害に苦しむ子供たちの姿を見たときに、学生時代に学んだ光触媒を思い出し、一念発起して2018年に創業した。『光触媒で子供たちの命を救いたい』という強い思いから『人類と地球の未来のために。「光触媒」で、水、空気、食をデザインする。』を社是にした」(同氏)。
新型コロナ禍で安全・安心を追及するニーズが高まり、カルテックの売り上げは急上昇した。壁掛け式や首掛け式の光触媒除菌・脱臭器はヒット商品となった。人気の秘密がシャープで培ったものづくり手法だ。光触媒は既に基本特許が切れており、参入は可能だが、なかなか一筋縄ではいかない。同社ではその応用、製品化、製造の過程で家電メーカーならではの匠(たくみ)の技が投入されている。