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 2023年1月に米国ラスベガスで開かれた「CES 2023」では、自動運転技術に代表されるクルマの知能化を打ち出した展示が目立った。具体的には自動車メーカー(OEM)や1次サプライヤー(Tier1)による「レベル3」以降の自動運転車両の発表、新型のLiDAR(レーザーレーダー)、車載ECU(電子制御ユニット)プラットフォームに向けたIC群、車載OSなどだ。その内容を見ていこう。

新製品発表のクアルコム

 モビリティー関連企業の集まるラスベガス・コンベンション・センター(LVCC)西ホールに、スマートフォン(スマホ)用SoC(System on a Chip)としてなじみ深い「Snapdragon」の文字が躍るブースがあった。米Qualcomm Technologies(クアルコム・テクノロジーズ)である。スマホ事業で培った技術をクルマに横展開する同社は、今回のCESで自社半導体の搭載車両を披露するなど、モビリティー事業を強くアピールした(図1)。

図1 Qualcomm Technologiesのデモ車両
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図1 Qualcomm Technologiesのデモ車両
(写真:日経クロステック)

 車載向けICの目玉として発表したのがデジタルコックピットとADAS(先進運転支援システム)、自動運転機能を1つにしたSoC「Snapdragon Ride Flex」である(図2)。「業界初のスケーラブルSoC群」(同社)と称するように、複数機能を同一ハードウエアに実装した。

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図2 Snapdragon Ride Flex
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図2 Snapdragon Ride Flex
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図2 Snapdragon Ride Flex
(図:Qualcomm Technologies)

 このSoCは画像認識用SoCである「Snapdragon Ride Visionスタック」と連係動作し、車両周囲および内部に配置される複数のカメラ、ミリ波レーダー、LiDAR、マップを使用して各種機能を実現する。複数機能の同時実行に対応すべく、複数OSの同時動作、仮想マシンによるハイパーバイザーの有効化などができる。2024年の生産に向けて現在サンプル出荷中という。

ソニー・ホンダのEV試作車は

 2022年9月に設立されたソニー・ホンダモビリティは、CES の会場で新ブランド「AFEELA(アフィーラ)」とそのプロトタイプとなる電気自動車(EV)を発表した(図3)。SoC にはクアルコム・テクノロジーズのクルマ向け製品シリーズ「Snapdragon Digital Chassis」を採用する。

 Snapdragon Digital ChassisにはSnapdragon Ride Flexも含まれる。AFEELAでは最大800TOPS(800兆オペレーション/秒)の処理能力を持つECU(電子制御ユニット)、自動運転/ADAS(先進運転支援システム)、HMI/IVI(車載インフォテインメント)、テレマティクスなどの主要機能にSnapdragon Digital Chassisを活用するとしたが、自動運転などはSnapdragon Ride Flexで実現するとみられる。会見ではソニーグループ CEO(最高経営責任者)の吉田憲一郎氏と、クアルコム・テクノロジーズ CEOのCristiano Amon氏が握手を交わすなど、親密さをアピールした。

図3 AFEELAのプロトタイプ
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図3 AFEELAのプロトタイプ
(写真:日経クロステック)

 その他にソニー・ホンダモビリティがCESにて発表したのは、(1)ブランド名、(2)プロトタイプ、(3)パートナーである。

 (1)のブランド名のAFEELAについて、「人が、モビリティーを“知性を持つ存在”として『感じる』こと、また、モビリティーがセンシングとネットワークに代表されるIT技術を用いて、人と社会を『感じる』こと、というインタラクティブな関係性を表現している」(ソニー・ホンダモビリティ代表取締役 会長 兼 CEOの水野泰秀氏)とした。

 (2)のプロトタイプとして披露したのが4ドアクーペの車両である。車内外に計45個のカメラおよびセンサー、最大800TOPSの ECUを搭載し、特定条件下でレベル3、より広い運転条件下でレベル2+の自動運転機能の開発を目指すとした(図4)。室内のインキャビンカメラやToF(Time of Flight)センサーによって、ドライバーの運転状況や走行状態をモニタリングし、交通事故を防止するという。

図4 45個のセンサー・カメラを配置
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図4 45個のセンサー・カメラを配置
(写真:ソニー・ホンダモビリティの動画をキャプチャー)