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 2023年は岸田文雄内閣の目玉政策である「スタートアップ育成5か年計画」が本格的に始動する。2022年12月2日に成立した2022年度第2次補正予算にはスタートアップ関連の施策が約1兆円計上された。過去最大規模の予算を背景にスタートアップの創出や育成が進むことになりそうだ。

 岸田内閣は2022年10月に「スタートアップ育成分科会」を始動させ、スタートアップの起業家やベンチャーキャピタル(VC)の投資家、事業会社の役員などによって、スタートアップ育成強化に関する5か年計画の具体的な内容を議論させた。その結果が2022年12月に発表したスタートアップ育成5か年計画案だ。この5カ年計画を具体化するのが2022年度第2次補正予算で、内閣府や経済産業省、文部科学省などによるスタートアップ育成関連の予算の合計が約1兆円に達した。スタートアップの各フェーズに合わせて、様々な施策を用意している。

長期目線での人材育成を重視

 スタートアップ育成5か年計画は3つの柱から成る。(1)スタートアップ創出に向けた人材ネットワークの構築、(2)スタートアップのための資金供給の強化と出口戦略の多様化、(3)オープンイノベーションの推進、だ。

図 政府による主なスタートアップ関連施策と予算
図 政府による主なスタートアップ関連施策と予算
スタートアップの段階によって異なる支援を提供(出所:内閣官房の資料を基に日経コンピュータ作成)
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 現状、海外と比較すると日本の起業数は圧倒的に少ない。中小企業庁の「中小企業白書」(2022年度版)がまとめた2020年のデータによれば、起業の指標となる開業率(総事業所数に占める新規開設数)は米国や欧州では10%前後で推移する一方、日本は5%前後の低い水準で横ばいの状況だ。

 そこで5か年計画でも、スタートアップ創出に力を注ぐ。「プレシード・シード」期のスタートアップに向けて、人材やネットワーク構築、資金面で支援する。注目の施策は「海外における起業家等育成プログラムの実施・拠点の創設事業」だ。経産省主導で実施される予定で76億円を計上している。

 また、社会課題を大学の研究などの高度な科学やテクノロジーの力で解決しようとする「ディープテック」の領域のスタートアップ支援にも巨費を投じる。経産省が主導する「ディープテック・スタートアップ支援事業」には1000億円、「創薬ベンチャーエコシステム強化事業」には3000億円を計上している。