日経クロステックの担当記者が座談会形式で2022年の携帯電話業界を振り返り、2023年を展望した。2022年はスマホの「一括1円」販売と、スマホを転売して稼ぐ「転売ヤー」が大きな問題となった。一連の問題を2023年に解消できるかが注目となる。
日経クロステック堀越功 2022年は、スマホの一括1円販売を契機とした転売ヤーの横行が問題として浮上しました。新品のスマホが中古より安く売られているというのは、どう考えてもおかしな状況です。ただNTTドコモの井伊基之社長が日経クロステックのインタビューで「一括1円は問題だが合法、戦うしかない」と答えていたように、激しい競争環境下で一括1円販売をやめれば顧客を他社に奪われてしまう可能性があるため、やめたくてもやめられないのが携帯電話事業者の本音です。
2022年10月からは総務省の有識者会議で、2019年10月に施行した改正電気通信事業法の効果や問題を検証する議論が始まりました。2022年11月のヒアリングでは、携帯電話各社が「端末の単体販売時の値引きにも上限を設けてほしい」と、一括1円販売を止めるための規制強化を望む動きに出ています。とはいえ、通信契約とひも付かない端末の単体販売に対し、総務省がどこまで規制強化のルールづくりに踏み込めるのか。公正取引委員会も2022年夏ごろから緊急調査に乗り出しており、一括1円販売が「不当廉売」につながるかどうかの調査結果次第ではないでしょうか。
携帯電話各社は一括1円販売の規制強化で意見が一致しているものの、その実現方法については異なる提案をしています。中でもNTTドコモは、新品の端末価格が中古端末の価格よりも安価にならないように、値引きの上限を設定するという具体的な提案をしています。中古端末の業界団体である「リユースモバイル・ジャパン(RMJ)」が実施していた、中古端末の平均買い取り価格調査などを参考にする手はありそうです。
日経クロステック榊原康 以前の記事で指摘しましたが、どうしても気にかかっているのは、通信契約とひも付かない端末の単体販売にまで踏み込んで規律する覚悟が果たして総務省にあるのかという点です。あくまで端末市場における独占禁止法上の問題であり、公取委が入るべき領域との指摘が多いです。公取委の調査結果が注目となりますが、公取委が率先して細かい基準を示すとも思えません。となると、ルールづくりにつながらない展開もあるのではないかと考えています。
ある携帯大手の幹部は「通信料を原資とした値引き、つまり携帯電話各社だけを規律の対象として、それ以外の端末メーカーなどによる販売は対象外とするように整理できないものか」と期待を寄せていましたが、総務省はどう動くでしょうか。仮に規制強化で端末の値引きが減れば販売台数の落ち込みは必至で、端末メーカーや販売代理店の反発も予想されます。実は、一括1円販売と転売ヤーの問題は2022年春ごろにも総務省の有識者会議で議論となりましたが、総務省は当時、「通信契約とひも付かない端末の単体販売にまで踏み込めない」として、携帯電話各社の自主的な取り組みに委ねることに決まったという話も関係者から聞きました。