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 「データの宝庫」として注目を集める小売り。「ID-POS(販売時点情報管理)」に代表される購買データのほか、購買に至るまでの消費者の行動や流通過程のデータなどを分析して有効活用する動きが活発だ。データの具体的な用途としてNRF 2023で特に注目を集めたテーマは2つある。店舗内やオンライン上での行動を分析して個人の嗜好に合った提案をする「パーソナライゼーション」と、需要に応じて在庫や生産をきめ細かく調整する「最適化」だ。いずれも小売業界が以前から重視しつつも成果を上げづらい、古くて新しいテーマだ。

 「世界の消費者の86%は、少なくともある程度のパーソナライゼーションを期待している」「世界の消費者の67%は、店内でスタイリストからのアドバイスやトレンドの紹介を受けることを重視している」。米Oracle(オラクル)は同社のブースでデータを示しながら、多様化する消費者の嗜好に応える重要性を説いた。

オラクルはブースでパーソナライゼーションへの対応の重要性を説いた
オラクルはブースでパーソナライゼーションへの対応の重要性を説いた
(写真:日経クロステック)
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 その一助として展示したのが「Oracle Retail Customer Engagement Cloud Service」だ。パーソナライゼーション機能を備え、データやAI(人工知能)による分析をもとに、店舗かオンラインかといったチャネルを超えて消費者に合わせた提案が可能になるという。米Oracle Retail(オラクル・リテール)のマイク・ウェブスターシニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーは「顧客である小売事業者がデータと分析で業務プロセスにより豊かな洞察を得られるよう、小売業に特化したAIを構築した」と話す。

「Oracle Retail Customer Engagement Cloud Service」の特徴について話す米オラクル・リテールのウェブスター氏
「Oracle Retail Customer Engagement Cloud Service」の特徴について話す米オラクル・リテールのウェブスター氏
(写真:日経クロステック)
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 例えばアパレルであれば「過去に購入した商品などのデータをもとに、個々の消費者が好むフィット感、デザイン、色といった好みを把握できる」(同)。さらに「オンラインで商品を探して実店舗で商品を見てから買うのか、その逆に実店舗で見た商品をオンラインで購入するのかといった行動も理解できる」(同)。そうしたデータを組み合わせながら「ギフトカードなどの特典やロイヤルティー制度の提供といった個々人に合った提案や施策が可能になる」(同)という。

 ウェブスター氏はさらに新型コロナ禍で多くの消費者がオンラインでの買い物に慣れたことで「価格設定や返品の容易さ、商品が届くまでの期間などについての要求水準が高くなった」と指摘。オラクル・リテールの提供するサービスでは、EC(電子商取引)や店舗での商品引き渡しなど様々な販売方法の組み合わせを可能にしつつ、需要予測やサプライチェーンの最適化といった面での改善も続けているという。