2021年や2022年のNRFは新型コロナ禍でオンラインでのみ出展したり出展そのものを取りやめたりした日本の流通業向けITベンダーが多かったが、2023年は3年ぶりに多くの企業がリアルで出展した。新型コロナ禍や技術の進歩を受け、ここ数年で消費者や流通事業者のニーズは大きく変化した。北米を中心とした海外市場でいかに流通改革の伴走者となるか。展示からは各社の戦略が読み取れる。
POS(販売時点情報管理)システム大手の東芝テックは、米子会社のToshiba Global Commerce Solutions(東芝グローバルコマースソリューションズ)が出展し、様々な小売事業者向けサービスを展示した。
その1つ、「ELERA (エレラ)」は東芝テックグループが提供するサブスクリプション型の小売事業者向けグローバルプラットフォームだ。購買や物流など様々なデータを集約するとともに、店舗内外の課題に即したマイクロサービスを構築できる。東芝グローバルコマースソリューションズでグローバルマーケティング&コミュニケーションズ部門を統括するフレデリック・カーレグレンバイスプレジデントは「東芝グループが小売り・流通分野で真にグローバルなソフトウエア戦略と開発アプローチをとった初の事例だ。ELERAを使えば、従来よりもコストを抑えながらより迅速かつ柔軟にビジネスをアップデートできる」と話す。
活用例の1つとして展示したのが、生体認証FinTechの米PopID(ポップID)との連携による顔認証セルフチェックアウトシステムだ。決済端末である「Toshiba Pro-X Hybrid Kiosk」に組み込んだ生体認証カメラで顔を読み取ると、事前に登録した決済方法により手ぶらで決済できる。スマートフォンに表示した顔写真などを生体認証カメラに読み取らせても拒否される仕組みになっているという。
東芝テックは2012年、米IBMからPOSシステムを中心とした小売業向けハードウエアを開発・販売・保守するリテール・ストア・ソリューション事業を取得した。引き継いだ顧客層には米国を代表する小売り大手が多く名を連ねる。
こうした顧客基盤向けに展開の拡大を目指すのが、故障予測機能などを備えた保守サービスだ。POS端末やモバイル端末、プリンター、ディスプレーなど様々な機器を、メーカーを問わず一元管理できる。
例えばプリンターはどんな挙動が見られると故障しやすいかといった情報を過去のデータから導き出し、事前に部品交換を勧めるという。ダッシュボードではどの店舗でシステムのOSをアップデートで1きていないかといった情報も見られる。店舗運営に支障が出る前に、機器やシステムのトラブルの芽を摘めるのが特徴だ。