NRF 2023では世界の小売り・流通市場をターゲットに出展した日本のベンチャー企業の姿もあった。「世界中で出ていることがステータスと見なされる」「出展ブースを抑えること自体大変」と出展者が話すNRF。狭き門をくぐり抜け、出展を勝ち取った企業の展示と戦略に迫る。
「我々は流通業の目線でいかに変革をもたらせるかを重視している」「導入と効果の実績が大きな強みだ」。Retail AIの永田洋幸CEO(最高経営責任者)は自信をにじませながら来場者に自社技術を売り込んでいた。展示していたのは「スマートショッピングカート(SSC)」だ。カートに付属するスキャナーで客が自ら商品バーコードを読み取り、キャッシュレス決済できる。
Retail AIはスーパーやディスカウント店を展開するトライアルホールディングスの子会社で、設立は2018年。既にトライアルと外販先の約120店舗で1万2000台のSSCを稼働させており、月間208万人が利用する。
展示したSSCは最新モデルを海外市場向けにサイズアップしたもの。購入商品のスキャン漏れがないか商品がカートに追加される前後の写真を使って消費者に確認する機能や、購入商品に応じてクーポンを提示するなどの機能を備える。普段スキャン漏れが少ない消費者は精算時の従業員によるチェックを軽くし、スムーズな退店と店舗運営の効率化を図れるシステムも展示した。いずれもグループの店舗でテストと改良を重ねる過程で開発実装してきたという。
米国は「人手不足、賃金の上昇によるコスト増が大きな課題になっている」(永田CEO)。SSCによるレジ業務にかかる人手やコストの削減効果や、自社開発によるSSC自体の価格優位性が強みになるとみる。さらに、米国はWalmart(ウォルマート)のような大手の寡占市場だと思われがちだが「数百~千店舗を超える規模のローカルチェーンも多い」(同)。ひとたび導入が決まれば大きな成果が見込める魅力的な市場だという。
Retail AIは2022年9月16日、POS(販売時点情報管理)システムの世界的大手である東芝テックと共同プロジェクトを始めたと発表した。2023年春には、東芝テックの小売流通事業者向けクラウドサービス「ELERA(エレラ)」上でSSCが使えるようになる予定だ。大きなパートナーを得て海外でも飛躍を狙う。