地方銀行の勘定系システム共同化を巡り、ITベンダー間の争いが激しさを増している。広島銀行が日本IBMからNTTデータの共同化に乗り換える方針を決めたことで、預金量で両社のシェアは肉薄する。採用行数だけでなく、預金量でもNTTデータが首位を奪取するシナリオが現実味を帯びてきた。一方、富士通は採用行がゼロになる見込みで、苦しい状況に追い込まれている。
「我々としても『まさか』だった」。NTTデータの幹部は、横浜銀行が中心のシステム共同化である「MEJAR」に広島銀行が参画する意向を持っていることを聞いた時、そんな感想を持ったという。
広島銀行は福岡銀行などを傘下に持つふくおかフィナンシャルグループと「Flight21」を形成し、基幹系システムを20年にわたって共同運営してきた。業界内では、Flight21は日本IBMが手掛けるシステム共同化の中で「優等生」とみられてきた。それだけに、広島銀行がFlight21から離脱し、日本IBMの最大のライバルであるNTTデータが支援するMEJARに乗り換えるという事実は、当事者ですら想定外の動きだった。
採用行数でシェア首位はNTTデータ
「広銀ショック」は地銀システム共同化に大きなインパクトをもたらす。これまで熾烈(しれつ)な首位争いを繰り広げてきたNTTデータと日本IBMのパワーバランスに変化が生じるからだ。
広銀ショックの前から、数の視点でみると、NTTデータは業界首位の座を固めていた。同社は現在、MEJARのほか、京都銀行や西日本シティ銀行などが参加する「地銀共同センター」、第二地銀が多い「STELLA CUBE」と「BeSTAcloud」という主に4つのシステム共同化を手掛けている。りそなホールディングス傘下の関西みらい銀行とみなと銀行を加えると、採用行は予定を含めて42行になる。地銀全体の42.4%が利用する最大陣営を形成している。
一方、日本IBMはFlight21以外に、千葉銀行が中心の「TSUBASA基幹系システム」、三菱UFJ銀行のシステムがベースで、めぶきフィナンシャルグループ傘下の常陽銀行や足利銀行などが利用する「Chance地銀共同化システム」、長野県の八十二銀行がけん引する「じゅうだん会」の大きく4陣営を展開している。採用行は単独で勘定系システムを手掛ける伊予銀行と島根銀行を合わせて25行、シェアは25.3%で、NTTデータと約17ポイントの開きがある。
しかし、預金量の観点でみると、見える景色は違ってくる。トップは37.1%のシェアを握る日本IBM。僅差でNTTデータ(36.5%)が追う構図だ。両社の差は預金量で2兆円超の開きしかなく、中規模地銀が1行でもNTTデータ陣営に加わると首位が逆転するような状況だ。シェア争いの行方は、地銀再編の動きと密接に関わってくる。