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 消費税を正確に納付するために必要となる「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」がほぼ確定した。制度開始を2023年10月に控え、財務省が制度の一部修正案を2023年度の税制改正大綱で示したからだ。2023年1月23日に開会した通常国会で政府は関連法令を提出する。

 修正案は、インボイス制度で大きな影響を受ける個人事業主や事務負担の増大を心配する中小企業を代表する業界団体の声に耳を傾けた自民党の税制改正大綱がベースとなっている。免税事業者が課税事業者へ転換する場合の負担に配慮したり、中小事業者などの事務負担の軽減策を講じたりしている。

 ただ、それらの多くは適用条件が細かく設定されている。制度を誤認していたがゆえに税負担が増えるといった事態を避けるため、修正案を踏まえた最終的なインボイス制度を正しく理解することが欠かせない。

中小企業、個人事業主に負担軽減策

 最も大きな修正点は、免税事業者が新たに課税事業者となった場合に消費税の納付額を通常の納税額(売上税額)の2割に抑えられる3年間の特例措置を設けたことだ。課税転換した場合の税負担を時限的に軽くすることで、結果として免税事業者から課税事業者への転換を促す効果がある施策といえる。

 中小企業や個人事業主の税務に詳しい税理士法人報徳事務所の赤岩茂代表社員兼理事長は「課税転換へのハードルを下げてインボイス制度を広く浸透させる効果がある点では、前向きな施策といえる。インボイス発行や消費税の納付手続きなどを通じて、中小企業や個人事業主が税務や経理業務の効率化に取り組む契機にもできる」と評価する。

 このほか、改正電子帳簿保存法に基づき2024年1月に義務化が始まる、電子データとして受領した領収書や請求書などの電子保存に必要なシステムの要件も一部緩和した。インボイス制度と電子帳簿保存法への対策を同時に進める企業が多いため、企業によってはより対策の負担軽減につながる場合がある。

 決められた様式しか認められない「適格請求書(インボイス)」の事務手続き負担を、一部のケースで軽減する負担軽減策も講じている。ただし、実際に制度を利用できるケースはかなり限定的である点に注意が必要だ。2023年度の税制改正大綱でインボイスの発行や受け取りを実態として省略できるケースは2つある。具体的には、(1)課税売上高が1億円以下などの条件を満たす小規模事業者が1万円未満の取引をする場合(2)返品や事後的な値引き取引に関わる「適格返還請求書(返還インボイス)」の金額が1万円未満である場合、だ。

 逆に言えば、その他のケースは少額であっても、正しい様式を満たしたインボイスを受け取っていなければ消費税の仕入れ税額控除が認められないという制度の骨格は維持されている。日本商工会議所や日本税理士会連合会などは、事業者の規模を問わず「3万円未満の少額取引はインボイスを不要にすべきだ」と要望していたが、政府は採り入れなかった。

 企業間取引のほか、従業員が個々に支払っているタクシー代金や物品購入などの経費精算も、一定の小規模事業者を除けばインボイス制度の対象だ。受け取った領収書が「適格簡易請求書」と呼ぶ宛名のない様式も含めて、正規のインボイスかどうかを確認して経理システム等に金額や科目を登録し、インボイスを保存する必要がある。

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