実は、浙江吉利控股集団(Geely)や比亜迪(BYD)、長城汽車をはじめとする中国自動車メーカーは、電気自動車(BEV)だけではなくプラグインハイブリッド車(PHEV)の生産にも力を注いでいる。そのための高効率エンジン開発に多くのリソースを割り振る。
理由としては、中国全体で新エネルギー車(New Energy Vehicle、NEV)市場は加速度的に拡大しているものの、その中のBEVだけでは利益を出しにくく経営を圧迫しているからのようだ。特に、レアメタルなど資材の高騰や、過当競争で各社の車両販売台数が分散していることが大きい。
2022年12月末で中国政府のNEVへの補助金が終了したことも減速感を強めた。その影響で2023年に入り、補助金の大きかったBEVより本体価格の安いPHEVの販売台数が増加している。BEVの販売不振により、米Tesla(テスラ)を筆頭に各社値下げ競争に突入しているという。企業体力が低下する要因となる。
EV大国で何が起こっているのか。今回は、電動化を推進する激動の中国自動車メーカーの本音の戦略に焦点を当てる。
中国・欧州でPHEVが健闘
営業不振に対応できるメーカーは、PHEVやレンジエクステンダー(航続距離延長装置)付きBEV開発に注力している。これは、PHEVなどが造れない中国内のBEVスタートアップとの差異でもある。BEVはメガサプライヤーのような部品メーカーの技術力でも開発は容易だが、PHEVのようにエンジン搭載が必要なクルマの開発は適合も含め複雑な技術が必要だ。
ここ数年、世界全体でEV(Electric Vehicle)やZEV(Zero Emission Vehicle)、あるいはNEVと呼ばれる電動車の販売台数が欧州と米国、中国を中心に拡大している。いずれも一般的に、PHEVとBEV、燃料電池車(FCEV)を含めた電動車を示す。
国際エネルギー機関(IEA)の公表では、2022年のEV(BEV+PHEV)の世界新車販売台数は、2021年比56%増の約1017万台と大台を超えた。全新車市場の約14%に及ぶ規模だ。その6割近くが中国市場で596万台である。その中のPHEVの台数は152万台と約25%だが前年比約3倍を記録。前年比の伸び率では、補助金があったにもかかわらずBEVよりPHEVが急伸した。
欧州市場でもPHEVは地位をしっかり確保している。英調査会社のJATO Dynamics(JATOダイナミクス)によると、2022年のEV(BEV+PHEV)の欧州新車販売台数は欧州市場の23%を超えた。PHEVについては、2021年、2022年と補助金が少ないにも関わらず40%以上と高いシェアを示す。欧州も前述の中国のようにBEVへの補助金が打ち切られれば、PHEVのシェアはさらに伸びる可能性がある。
ユーザーの立場からすると、中国のように補助金がなくなるとBEVの価格優位性は低下する。冒頭のように、中国自動車メーカーは、NEVの1つであるPHEV開発にも注力し始めた。そのキー技術が電動車に最適に特化した高効率なエンジンである。欧州自動車業界では、このエンジンをDHE(Dedicated Hybrid Engine)と称する。