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2023年4月に提出する技術士の受験申込書は、その内容が筆記試験の合格後に実施される口頭試験での質問に直結する。筆記試験後の対策を有利に展開できるか否かは、受験申込書の提出時点で決まってくるのだ。筆記試験の合格を無駄にしないための準備について指南する。(日経クロステック編集部)

1.実務経験証明書の概要

 受験申込書の中で、特に重要なのが実務経験証明書だ。口頭試験の際の重要な資料となるからだ。合格を勝ち取るために、慎重に記入して提出しなければならない。

 2022年度の試験で提出を求められた実務経験証明書の様式が、23年度の試験で変わる可能性は低い。以下では22年度の様式を基に、その書き方を説明する。

 実務経験証明書の上半分には経歴を記す(以下、経歴欄)。ここだけで5行分の空間がある。下半分には経歴欄に記した項目の1つを選択して720文字以内で業務内容の詳細を記述する(以下、詳述欄)。

 経歴欄は、技術士試験の受験に必要な実務経験年数と受験する科目にふさわしいキャリアの有無を確認する部分だ。一方の詳述欄は、技術士法2条で技術士に求める「高等の専門的応用能力」を発揮した業務の経験を確認する部分になる。実務経験証明書を記入する際は、これらの目的に合致させなければならない。

 口頭試験の試験官は、実務経験証明書を手元に置きながら、受験者に質問する。22年度の口頭試験では、業務の経歴や詳細について、ホワイトボードで説明するよう求められた受験者がいた。特に、詳述欄に記載した業務に対しては、質問が集中する。実務経験証明書を記入する時点で、口頭試験の質問に対応しやすくなるよう備える必要がある。

2.経歴欄の書き方

 5行から成る経歴欄を、履歴書の経歴欄と同様に考えている人がいる。だが、これは間違いだ。入社から23年3月までのすべての経歴を書く必要もなければ、過去の辞令と完全に合致させて書く必要もない。もちろん、過去の経験年数を5等分して書くわけでもない。記載する経験については、受験に必要な最低年数が確保できていればよい。

 技術士は「技術士の名称を用いて」業務を行うと、技術士法で定義されている。資格取得後すぐに「技術士」を名乗って活躍する姿が期待されているのだ。

 大切なのは直近の技術力だ。この点を踏まえると、5行ある経歴欄のうち、下から4行分は、最近実施した業務を1行につき1つずつ書けばよい。4行で4、5年分の経歴を記載すればよいのだ。残りの経歴は一番上の行にまとめて記す。

詳細 勤務先
(部課まで)
所在地
(市区町村まで)
地位・職名 業務内容 従事期間
年・月~年・月 年月数
  ○○株式会社東京本社設計部 東京都千代田区 技術員 道路の基本設計、詳細設計 2012年4月~2018年3月 6 0
  ○○株式会社東京本社設計部 東京都千代田区 技術員 地下水位が高い砂地盤の市街地で、施工時に建物など近接構造物への影響が懸念される半地下道路トンネルの設計 2018年4月~2019年3月 1 0
  ○○株式会社東京本社設計部 東京都千代田区 技術員 正規圧密粘性土層の軟弱地盤上でプレロードと圧密促進工法を併用した道路盛り土の設計、指導 2019年5月~2020年3月 0 11
○○株式会社大阪支店設計部 大阪府大阪市中央区 主任技術者 縦断勾配による制動荷重の影響や曲線部の遠心力の影響を考慮した山岳地の道路拡幅における補強土壁の設計 2020年6月~2022年3月 1 10
  ○○株式会社大阪支店設計部 大阪府大阪市中央区 課長 新設のバイパス道路で縦断勾配が変化する曲線部での切り土法面において、視距の確保に配慮した法面保護工の設計 2022年4月~2023年3月 1 0
※業務経歴の中から、下記「業務の内容の詳細」に記入するものを1つ選び、「詳細」欄に○を付してください。   10 9
実務経験証明書の経歴欄の記入例(出所:堀 与志男)

 このように書けば、下の4行は業務内容の欄で具体的な内容を記述しやすくなる。業務内容を詳しく書ければ、口頭試験において「地下水位が高いと書かれているが、どれくらいですか」といった具体的な質問への誘導が可能になる。これだけで、口頭試験を有利に運べる。

 業務内容の欄を「道路の設計」といった大くくりな表現でまとめてしまうと、想定外の質問を招きやすくなる。1年や2年にわたって、1つだけしか業務がないというケースは少ないはずだ。多くの受験者は同時に複数の業務をこなしている。経歴欄には代表的な業務を選んで書けばよい。

 さらに、従事期間は連続させた方がよい。業務の間が長く空いていると、「この間は何をしていましたか」といった余計な質問につながりやすくなる。従事期間は業務や工事の契約期間と厳密に一致していなくても構わない。関連した仕事を進めていれば、その期間を含めるなどして、業務の間をできるだけ空けないようにする。